第二章
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「我々は昔裸足だったからだよ」
「そうですよね、けれど今は」
「靴を履いているよ」
「裸足じゃないですね、だったら」
「足の裏の毛はというのかね」
「はい、裸足の足を守る必要がなくなったから」
それでというのだ。
「もういらないですよね」
「そう言われるとそうかもな」
先生も否定しなかった。
「実際に」
「じゃあこれから足の裏の毛はどうなるんでしょうか」
「さて」
そう言われるとだ、先生も返答に窮した。何しろホビットにとって足の裏に毛があることは当然のことだからだ。
「どうなるかな」
「わからないですか」
「そんなことは考えたことがなかったし」
こうオルボルグに言葉を返した。
「考えた人もいなかったかな」
「そうなんですか」
「何しろホビットが靴を履いたのは最近だ」
「皆あっという間に履く様になったんですよね」
「履いてみるとこれが快適で安全だ」
裸足でいるよりも遥かにだ。
「我々ホビットにとってもな」
「だからもう裸足の人は殆どいないですね」
「そうなった、だがこれから足の裏の毛がどうなるか」
「それはですね」
「わからない」
先生でもというのだ。
「本当にどうなるかな」
「そうなんですね」
「先生もな、しかし君も面白いことを考えるな」
「足の裏の毛のことを」
「そんなことを聞いてきたのは君がはじめてだ」
オルボルグがというのだ。
「ホビットは好奇心が極めて旺盛な種族だが」
「その中でもですか」
「際立っているな、その好奇心は大事にすることだ」
「好奇心こそが世の中を発展させる、ですね」
「そこから何かを発見したり何かをしようとするからな」
だからだというのだ。
「好奇心は必要だ、そして君はな」
「好奇心を大事にする」
「これからもそうすることだ」
こうオルボルグに言うのだった、そしてだった。
オルボルグはそれからも学校の勉強や家の肉屋の仕事の合間にホビットの足の裏の毛のことについて考えた、具体的にどうなっていくのかを。
その中で結婚して子供も出来た、その子供が生まれた時に足の裏も見たがふと気付いたことがあった。その気付いたことはというと。
「何か薄くないか?」
「薄いって何が?」
「足の裏の毛がだよ」
こう我が子と共に横になっている妻に言った。
「何かね」
「そうなの」
「そう思ったがね」
「気のせいじゃないかしら」
「どうかな」
首を傾げさせつつ妻に返した。
「それは」
「ええ、それにね」
「それに?」
「足の裏の毛なんてね」
それこそというのだ、妻のボアーンは。
「別に何でもないでしょ」
「何でもないか」
「だって私達もう裸足じゃないから」
ホビットもそうなったというのだ。
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