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狐の試験
第四章

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「私もそれ位は出来まして」
「銭には困っていないか」
「何でしたら旦那様に部屋代以上にお礼の銀を出しますが」
「いい、わしは銀は必要なだけあればいい」
 実はそちらには欲深くはない陳だった。
「書は別だがな」
「そうなのですか」
「うむ、書は欲しいが」
「銀はですか」
「別にいい」
「では何か書をお渡しします」
「それなら有り難い、しかし銀はな」
 李が造り出せるそれはというと。
「お主の為に使え」
「部屋代と暮らしの為に」
「そうするといい、そして今もか」
「はい、自分の飯代はです」
「お主が出すか」
「そうしますので」
 それでというのだ。
「ご安心下さい」
「ではな」
 陳もそれで納得した、李がそう言うならとなってだ。そうしてだった。
 李は学問を続け夏と秋の間の土用の時に陳に行ってきた。
「これから泰山に参上しまして」
「そしてか」
「はい、試験を受けてきます」
 その会試をというのだ。
「そうしてきます」
「励んで来る様にな」
「三日ありますので」
「そこも人の科挙と同じだな」
「左様ですね、部屋に入れられまして」
「飯とかも持ち込んでだな」
「受けます」 
 そうした試験の受け方だというのだ。
「そしてそうしたところも」
「科挙と同じだな」
「そうですね、では人のそれと同じ様に」
「試験を受けてくるか」
「そうしてきます、暫しここを後にします」
「結果は何時わかる」
「これが試験が終わればすぐに」
 まさにその時にというのだ。
「わかります」
「そこは人のものと違うな」
「何しろ泰山娘々にお仕えしている神仙の方々が監督し判定されていますので」
 試験会場を見張っていてその合否も確かめているというのだ。
「ですから」
「それでか」
「はい、それでなんです」
 まさにというのだ。
「もう終わればすぐに」
「ではここに戻る時はか」
「及第したかどうかの報告も出来ます」
「では吉報を待っている」
「それでは」
 李は陳と彼の家族に暫しの別れを告げてだった、術で姿を消して即座に泰山に向かった。縮地法を使っていた。
 そうしてだ、三日後に彼は陳のところに帰ってきて笑顔でこう言った。
「見事です」
「そうか、及第したか」
「そうなりました」
「それは何よりだ、会試に及第するとな」
「郷試に及第した時よりも」
「遥かに立場がよくなる」
「そこも科挙と同じでして」
 まさにというのだ。
「これだけで全く違います」
「そうだな、喜ばしいことだ」
「はい、しかし殿試は」 
 最後のこれはというと。
「やはりです」
「これまでの試験以上にだな」
「難しく」
 それでというのだ。
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