第六章
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「どうせその頃にマルクスだの読んで」
「それからですね」
「何も変わっていないんだろう、世の中も知らないままでな」
「何かそう思うと下らない奴等ですね」
「あの頃も馬鹿だと思っただろ」
「はい、青二才共が何も知らないで喚いて暴れていた」
これが田中が見た学生運動だった、車の中で荒岩と共に見たそれは。
「暴れる位ならです」
「革命とか言ってな」
「もっと色々世の中を勉強して」
「政治を変えたいなら選挙だな」
「それに行けばいいんですよ」
そして投票するだけだというのだ。
「ヘルメット被ってゲバ棒振り回して革命だとか」
「暴力を出してもな」
「馬鹿でしかないですよ」
「まして日本は民主主義国家だしな」
当然ながら当時もだ。
「だったらな」
「選挙行けばいいだけですね」
「日本を変えたいならな」
「そういうことですよね」
「俺は選挙に行ってるぞ」
「俺もです」
「ならそれでいい、それだけだ」
まさにと言う荒岩だった。
「本当にな」
「ですよね、それが学生の頃で」
「いい歳したおっさんがその頃のまま言うとかな」
「全然勉強してないですね」
「青二才がそのまま大人になって同じことを言っている」
「そう言うと余計に馬鹿ですね」
田中は今つくづく思った、彼等のことを。
「普通の会社で働いていたら」
「まずそうはならないな」
「変な組合にでも入らない限りは」
労働組合にもそうした運動家がいるからだ、田中はこうも言ったのだ。
「そうはならないですね」
「本当に普通はな」
「じゃあその原作者の漫画はもうです」
「読まないか」
「子供にはどうするかは考えます」
「読んでも後でわかる」
大人になったその時にというのだ。
「そんな馬鹿なことを言っていた漫画があったってな」
「それだけですね」
「そして学生運動もな」
それもというのだ。
「後でな」
「馬鹿扱いですか」
「そうなっていくな」
荒岩は冷淡とまで言える位の落ち着いた声で田中に話した、そうして彼と二人で食事を済ませてだった。
会社に帰って仕事をした、今や二人は会社になくてはならない存在になっていた。
その二人が定年して落ち着いてからだ、お互いの家が近かったので定年してからもよく会っているが。
ある日田中は荒岩と共に釣り堀で釣りをしつつ隣に座っている彼に言った。
「俺が課長の頃に話したことですが」
「何だった?」
すっかり皺だらけになった顔を完全に白髪になった田中に向けてだ、荒岩は彼に問うた。
「あの頃も色々一緒に話したな」
「あれですよ、漫画原作者の話」
「ああ、あの馬鹿を言ってたな」
「経済侵略とか日本のアジア再侵略とか」
荒岩も田中の話を聞いてこの話を思い出した。
「あい
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