継承のメモリーキューブ
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ロンは恐怖に敏感ですよね。何らかの脅威や危険に対し、予知レベルの察知能力があると言いますか。今後シャロンが怖いと感じたものは、一層注意しておく必要がありそうです』
「ただ臆病なだけだと思うけど……」
『しかし王や将軍などのように、他人を指揮する立場の者は勇敢な者より臆病な者の方が適しているんですよ? なにせあらゆる物事に慎重になるから、欲をかいて戦いの被害を増やし過ぎないし、それに伴って和解の障害になる火種を生まないし、味方も自分達の生存率が上がって士気が高まります』
「わかりやすく表すなら、戦士と一般人では視点が違う、みたいな?」
『あ〜大体そんな感じです』
そんなわけで雑談もひと段落し、私は高圧電流の床を壁走りで無理やり突破した。にしてもこの床、飛行魔法を使えれば何の問題も無いんだろうが、そもそもこんな狭い所だと目的が無い限り普通は使わないものらしい。飛んだ所で特に移動範囲が増える訳でもないし、機動力も上がらない、むしろ勢いが付き過ぎて壁にぶつかる危険があるから、速度に意識を置く必要があるし、そのせいで戦闘に集中できず劣勢に追い込まれることだってよくある。飛行魔法を覚えたての初心者魔導師にはよくあるミスなんだとか。恐らくはそういう常識の穴を突いたトラップなのだろう。
それはともかく、一番奥にたどり着いた私が見たものは、大規模な電子機器が張り巡らされた部屋と、その先にある大穴を見通せるガラスの壁だった。
「何だろう、ここ。まるで何かのデータバンクのような雰囲気がある……」
試しに目の前のコンソールパネルをいじってみると、ぼぅっと起動して画面が浮かび上がった。画面には何かの文字列が並び、文章らしきものを展開していた。恐らく、これはアカウントを使うためのパスワードなんだろう。
「この文字は……」
『ミッド語でもベルカ語でもありません、どうも知名度の高い言語ではないようです。これでは読めませんね』
「ふんふん……“高貴なる者たちよ、地上へようこそ”……」
『って、読めるんですか!?』
「世紀末世界で読んだ本の中に同じ言語があった。あっちの図書館には次元世界では失われた言語の文献もまだ残ってたから、好奇心をそそられて翻訳している内にいつの間にかね」
『うわぉ、しかも一瞬で解読してましたし、次元世界の考古学者や翻訳家は形無しですねぇ……』
とりあえずコンソールに今の言葉を入力するとログインに成功し、読み込みを開始した。一体何があるんだろうと思った、その時。
『驚いた、まさかあの言語を読める者がいたとは』
こんな人気のない場所で唐突に老人のような声が聞こえ、私は心臓が一瞬飛びあがるほどに驚いた。すると今の声に鼓動するかのように、コンソールに酸素マスクを付けたような顔を
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