継承のメモリーキューブ
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んでいるが……それを逆手に取る」
「なるほど、いっそ二度と使えなくすれば次の戦争の要因にはなりえない、ってことですね。……ですが、あなたは良いのですか? それを為せば、恐らく……」
「両勢力の目論見を潰したことで恨みを買い、事実と虚構を混ぜ合わせた汚名を背負うことになる。例えばあんたの制御下を離れた後にこの艦が滅ぼした国や人が、情報操作で俺が殺したことになったり、身を投じて戦争を止めた聖者を手にかけた悪魔と呼ばれたりと、まあ少し考えるだけで色々ある。でもそんな外聞、俺にはどうでもいい。俺にもこの策を貫く理由がある」
「理由?」
「……」
「答える気は無いのですね……わかりました。では私も最後の力を振り絞って、あなたに協力します。もう自力ではほとんど動けない身体ですが、艦のシステムに干渉してあなたへの攻撃を妨害することは、まだできます」
「そ。じゃあ少しだけ踏ん張ってて。あんたが世界にあったら不安に思うもの、残したくないと思ってるもの、全部壊してくる」
「ええ、いってらっしゃい。……この言葉を口にしたのは、いつぶりでしょうか……。こんなことを思えるのも、“ゆりかご”に囚われてからは一度もありませんでしたからね」
久しぶりに笑顔を浮かべた彼女―――聖王オリヴィエは彼を見送り、彼はエレミアの策の通りにゆりかごの各パーツをスクラップ同然になるまで内側外側関係なく破壊していった。このゆりかごは素体の戦艦(それでも全長1キロメートルぐらいある)に、武装の大半を担う外部ユニットを装着することで本領を発揮する。彼はその外部ユニットを悉く粉砕し、素体の戦艦もよほどの技術者が修理しない限り、二度と飛ばせないほどに壊していった。
盛大に破壊したことでゆりかごの墜落も時間の問題となった頃に、彼は玉座の間に戻ってきた。それは牢獄に囚われし聖王に終わりを与えるため、彼女の魂を解放するため。もはや生命維持システム無しでは生きられない彼女だが、ゆりかごの完全破壊、及び次の戦争回避のためには彼女の抹殺が必要不可欠であった。
「これでベルカは力と欲に憑りつかれた者の思惑を覆し、次の戦争を起こさずに平和へ歩き出せます。あの凄惨な戦争はこれで本当に終わった、新しい時代が始まった……」
「……」
「後は……私に残された最後の役目を果たすだけです。私の命を消し、血塗られた暗黒の時代に終止符を打つこと。もう……あんなことが繰り返されないように、皆で明日の太陽を拝めるように。だってこの世に明けない夜は無いって、あなたが示してくれたんですから」
「……オリヴィエ・ゼーゲブレヒト。あんたは……」
「あぁ、そういえばもう一つだけ大事な物があったのを思い出しました。玉座の後ろに埋め込まれてある剣を持って行ってください。あれは力の及ぶ一
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