継承のメモリーキューブ
[16/29]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
若者達は我々の目の前で闇の書の守護騎士による不意打ちを受けて殺された。その場にいた我々も深い手傷を負い、魔力を蒐集されて打つ手が無くなった我々の前で当時の闇の書は魔力を完全に充填させてしまった』
『闇の書に魔力が充填すると、次に起こるのは管制人格とナハトヴァールによる全ての破壊だ。ニダヴェリールの大穴を思い出せ、あれが都市部の真ん中で発生したら、どれだけの犠牲が出るかは想像もつかない。故にゴエティアは地上を守るために闇の書を成層圏にまで運び、闇の書諸共自爆した』
『おかげで地上に大した被害は出ず、世界も救われた。だが……失ったものは大きすぎた。闇の書に対抗できる戦力もそうだが、我々どころか次を託せる存在がいなくなれば、これまで管理局や彼女が必死に培った秩序が崩壊してしまう。彼女の意志を守るためにも、我々は死ぬわけにはいかなかった。肉体を捨てて脳だけになってでも、生き延びる必要があった』
なるほど……段々読めてきた。闇の書の襲撃のせいで最高評議会は肉体を失い、次の世代を育てる余裕も無くなってしまい、徐々に思考が狂い始めたのだろう。闇の書のせいで全てを狂わされた、という意味なら彼らも私と同じなのか。
『肉体を捨てた我々は業務の傍らで次の闇の書事件に備えてギア・バーラー、ゴエティアの再生を目論んだ。彼女のゴーレムクリスタルは大きく損傷し、核となっていた物質は自爆のエネルギーになったことで紛失されていた。故に我々は核になる物質の捜索や、彼女のゴーレムクリスタルを修復する方法を模索した。それで見つけたのが、ゾハル・エミュレーターだ』
「あ、ここで話が繋がるのね」
『ゾハル・エミュレーターの力を注ぐことで、ゴエティアのゴーレムクリスタルはゆっくりと修復されていった。とはいえ修復が終わるのに何年かかるかもわからず、こうして誰の目にも付かない場所に隠していた。そういう事情があったことで我々は闇の書などのロストロギアの脅威に対応する方法を別に用意する必要があり、様々な研究や策を講じていった。……後はさっきも語った通りだ』
「なるほど、あなた達は最強のデバイスであるモナドを、復活させた上で強化したゴエティアに持たせるつもりだったんだね。でもゴエティアが変わり果てたあなた達に従うと思ってたの?」
『ああ、思っていた。つい先日まではな』
「?」
『彼女をイモータルに奪われてしまったのは痛いが、しかし新しいドライバーであるエリオ・モンディアルのクローンと接し、嬉しそうに微笑む彼女を見て、我々は気付いた。彼女に、愚かで醜くて浅ましく成り果てた今の我々を見られたくないと。ああ、正直に言おう。我々は彼女を愛していた、彼女といることに幸せを感じていたのだ。我々と共に生き、我々以上に平和と幸せを渇望し、我々よりはるかに高潔に戦い抜いた
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ