継承のメモリーキューブ
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る者、共にはけ口が必要だったのだ』
『我々は際限なく現れる持たざる者達を“悪”とみなすように、管理局法を制定した。持たざる者達も我々の策の下、自覚なき操り人形として動かしてきた。こうして“持つ者の善”と“持たざる者の悪”が永遠に衝突するシステムを構築し、法の下で懐柔させていくことで彼らが培った力を取り込んでいった』
……はぁ、なんだかなぁ。思わずため息が出たよ。
最強のデバイス、神剣モナド?
管理局法は持つ者と持たざる者を衝突させるために用意した法律……?
持つ者と持たざる者を衝突させることで、彼らの力を取り込む……?
ごちゃごちゃ言ってるけど彼らの言い分は要するに、管理局に集った人間は散々使い果たし、ボロ雑巾のように捨てる。邪魔者は利用できるように誘導し、最終的には取り込んで何者にも屈しない力を得る、ってことだろう。確かに世界を平和にするってことは綺麗な理想なんだろうけど、理想って奴は綺麗であればあるほど血を求める。まるで月夜に嗤うヴァンパイアのように、正義の理想は妖艶に人を誘惑、魅了する。そしてアンデッドのように感染を広げるんだ。
そんな風に考える私から見れば、こういう理想主義者はイモータルと同類だね。
『我々がそうであるように、正義であろうとする者は、他者にもそうあれと望む。他者にとってはそれが途轍もない苦痛であろうと、自らが信じる理にその者が従うことに喜びを感じる。それがその者のためになると、一切疑わずに』
『それが受け入れられない者、即ち持たざる者は何かを変えようとして、他者を排除しようとする。自らの信じる考えを成し遂げるためならば、他者を犠牲にしようと構わなくなるほどに』
『そう、正義は悪であり、悪もまた正義である。長い時を経た我々は知っている、平和とは双方のバランスが調和を取れている状態であると。正義が強くなり過ぎた時は、正義の下に人心が動き、偏見と独裁が横行した。悪が強くなり過ぎた時は、悪の下に時代が動き、倫理と秩序なき混沌を生み出した』
『我々はヒトの無意識を管理下に置くために、様々な手を尽くした。環境による思考の誘導、言葉による意識の変質、喪失による感情の覚醒……』
『大抵のヒトはAという環境にBという事象が起こればCという行動をする。ありとあらゆるパターンとデータを集め、確率と統計を計算、考察し、我々は次元世界に生きるヒトの在り方を掌握した』
「傲慢、ここに極まれり。在り方を掌握とか、まるで自分達が神にでもなったかのような言い方だね」
『それの何が悪い? 力のある者がそれ相応の立場と権利を得るのは、社会のシステムとしても当然の話だ。我々のような特別な存在こそが、民衆を、世界を導かなければならないのだ』
『例えばの話だ。天才とも謳われるほどの賢者が、知性の欠片も無い
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