継承のメモリーキューブ
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旧暦***年。
「あれから……何年経ったんでしょう……」
制御を離れ、暴走状態に陥っている戦艦ゆりかご。その内部にある荘厳な造りの部屋、玉座の間で聖王オリヴィエは無数のコードに繋がれ、自力で動かせないほど衰弱した身体を椅子に横たわらせていた。幸か不幸か、暴走によって一度は失った自我を取り戻せた彼女は必死に戦艦を止めようと手を尽くしたのだが、結局コントロールを取り戻せないまま、こうして力尽きてしまったのだ。
「もう外の戦争は終わった、後は私が死ねばこの艦は止まるのに……この艦に搭載されている生命維持システムがそれを許してくれない。もう誰も殺さなくていいのに、勝手に誰かを殺してしまう。そんなの……嫌なのに……自分じゃ止められない。死にたいのに死ねない、生き地獄に囚われてしまった。だからお願い……誰でもいいから、早く私を……」
轟音、震動。
『外部装甲破損、敵性分子侵入。排除開始』
「侵入者……? もしかしてクラウス……? ううん、希望を持たない方が絶望は少なくて済みます。艦内のセキュリティシステムも凶悪なものばかりです、なにせ生半可な人間では一歩進むだけで全身穴だらけなんですから……。ああ、でも……叶う事ならば、私の所にたどり着いて欲しいです」
爆発、激震、破砕音。
「中々頑張りますね、この侵入者。もしかしたら、この人なら本当に……私を終わらせてくれるのでしょうか?」
陣風、爆裂。
侵入者は巨大なメイスで艦のセキュリティシステムをなぎ倒し、玉座の間に到着する。彼はそこで驚きながらも子犬のようにすがる目をしているオリヴィエを見つけ、盛大にため息をついた。
「(オリヴィエはナイチチ……噂通りだな)」
「(なぜでしょうか、すごく失礼な方法で判断された気がします)」
「ん、悪いな。来たのがクラウスじゃなくて」
「あ、いえ……そのようなつもりでは……」
「気遣わなくていい、彼らのことは後で話す。で、あんたは本当に聖王オリヴィエ?」
「ええ、私が聖王オリヴィエです。ようこそ、侵入者さん。心から歓迎します」
「歓迎するつもりならあんな花火はいらない、正直鬱陶しい。でさ、事情を知ってから一度言いたかったんだが、あんたこんな牢獄に自分から閉じ込められるとか何なの? マゾ?」
「ま、マゾじゃないですよ……! だってこうでもしないと、戦争は終わりそうになかったんですし……」
「当時のあんたが切羽詰まってたのは知ってる。けど今は別の戦争を引き起こしかねない立場になってるから、本末転倒だ」
「え、別の戦争……?」
「やっぱり何も知らないか。今の情勢でこのままあんたを消せば、ゆりかごの次の所有権を巡って戦争が再発しかねない。どれだけ膨大な被害を出した所で、コレに秘め
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