白布飛ぶ
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いってのはなさそうだ。とすれば話は簡単よ。これに何か名前をやるんだ。名前ってのは物でも人でもバケモノでも、なんでも縛る力があるからな。『お前』とかって呼ばれるよりは、言う事聞こうって気になるだろ?」
そんなもので解決するんですかぃ? と一瞬思いやしたが、よくよく考えてみると、心当たりがありやす。特にバケモノに関しては、名前も何もない奴と、ちゃんとした名前がついてるやつとじゃ、やることの大きさとか、そういうのが違ったりしやす。
「わかりやした。けど名前と言われても、あっしにゃすぐに思いつかねえんですが……」
名づけなんてそうそうやったことねぇもんで。
すると褐鴉の旦那は、なら儂が考えよう、と言って暫く黙り込みやした。
「そうだな……『しろうるり』というのはどうだ?」
「なんですかぃ? それは」
「知らんよ。今思いついただけだ。もしそういうのがあるんなら、きっとこのバケモノに似てるんだろうがな」
さっぱり意味が解りやせんって……。
それでも名前にはなるんでしょうな。あっしがその名を呟いた途端、布ははしゃいであっしのところに来たんでさぁ。
問題が解決したにはしたんですが、突拍子もないというか、訳がわからないもんで、どういう顔をしたらいいのかわからない。
仕方ないんで何となく『しろうるり』を見てると、旦那が懐から酒瓶を取り出しやした。
「そうだ、土産にこれを持ってきた。一杯やろうや」
しろうるりからは完全に興味が離れてる様子の旦那。盃を二つ取り出して、酒を注ぎやした。
……解決したんで、まあいいってことにすりゃいいんですかね。
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