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108部分:イドゥンの杯その十四
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イドゥンの杯その十四

「それは考え付かなかったか」
「はい。まさかと思いますから」
「相手の戦力は倍以上だ。正面から普通にやって勝てる状況ではない」
 トリスタンは述べた。
「ならば。こうした奇計を使おうと思ってな」
「その為の要塞の移動であったと」
「既にその中には爆発性のエネルギーを充満させている」
「スイッチは」
「この生体コンピューターローゲの中だ。全ては私の手の中にある」
「では」
「そうだ。全ては私が決める」
 自信に満ちた声であった。
「わかったな。では要塞を出せ」
「はっ」
 部下達は敬礼で以って応えた。そして要塞を動かさせる。
「要塞を移動させました」
「よし、艦隊は一時下がれ」
「了解」
「私の指示を待て。よいな」
「はっ」
「まずは要塞をぶつける。全てはそれからだ」
 要塞は敵艦隊へ向けて動く。モニターには前へ向かう要塞とそれに対処しようとする帝国軍が映っていた。要塞は緑の球体、帝国軍は赤い陣である。なおこちらの軍は青く表示されていた。
「帝国軍、要塞に向けて攻撃を開始しました」
「うむ」
 トリスタンは部下の言葉に応える。
「攻撃を集中させております」
「要塞表面にダメージが蓄積されていきます」
「まだ大丈夫だ」
 だがトリスタンはそれを聞いても動じてはいなかった。
「まだな。落ち着くのだ」
「わかりました」
 本音を言うならば部下達は内心不安であった。だがトリスタンのいつもと変わらない冷静な様子を見て彼等も落ち着きを保っていたのであった。
「敵艦隊にさらに接近」
 オペレーターから放送が入る。
「要塞表面のダメージさらに蓄積」
「そろそろだな」
 トリスタンはその報告を耳に、距離をモニターから目に入れていた。腕を組み呟いた。
「今だ」
 帝国軍が要塞を包囲し、距離を接近させたところで動いた。
「要塞を爆破させる」
「今ですか」
「そうだ。今こそその時だ」
 スイッチを取り出した。
「爆発させる。よいな」
「わかりました。では」
「その後で艦隊を動かす。それに備えておけ」
「はっ」
「やるぞ」
 トリスタンはスイッチのボタンに手をかけた。
「これで一気に決める」
「一気に」
「そうだ、今こそな」
 敵艦隊は要塞を完全に取り囲んでいた。
「今こそ。よし」
 その時が来た。トリスタンはボタンを押した。
 するとモニターに映る要塞が爆発した。そしてその光と熱、衝撃波で帝国軍を襲う。それに帝国は瞬く間に破壊の嵐の中に覆われた。
 艦艇が揺れ動き、次々に熱で焼かれ衝撃波の前に砕け散る。その爆発は一瞬であったが帝国軍の受けた傷は永遠のものであった。
「敵艦隊の損傷率、五割を越えております」
「五割を」
 参謀達は報告を聞
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