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107部分:イドゥンの杯その十三
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イドゥンの杯その十三

「わかっていたか」
「蘇ってきている記憶が教えてくれました」
「記憶が」
「そしてこれであの竜を倒せるのですね」
「そうだ、巨人をな」
「名前は」
「ミョッルニルだ」
 トリスタンは強い声でその名を述べた。
「ミョッルニル」
「巨人を倒す雷神の槌だ。部下が名付けてくれた」
「そうなのですか」
「これを・・・・・・他の者にも渡すのだな」
「はい」
 パルジファルの返答ははっきりしたものであった。
「これを必要とされる方がおられますので」
「我等の同志か」
「そうです」
 これもトリスタンはわかっていた。今やパルジファルの考えもある程度わかるようにはなっていた。
「ヴァルター=フォン=シュトルツィング」
 パルジファルはその者の名を口にした。
「彼にこの兵器を手渡します」
「竜を倒す為に」
「はい、そして帝国を倒す為に」
「わかった」
 トリスタンはそこまで聞いて頷いた。
「では手渡して、この技術を」
「はい」
「我等の同志の為にな」
「わかりました。ではこれで」
「また会おう」
「はい」
 こうして二人はまた別れた。だがそれは一時の別れであった。
「行かれましたね」
「うむ」
 トリスタンは部下の言葉に頷いた。
「そして我等も行く時が来た」
「では」
「全軍コノートへ向かうぞ」
 指示を出した。
「コノートに駐留する帝国軍を倒す」
「はい」
「あの要塞を使ってな。よいな」
「あの要塞をですか」
「そうだ」
 彼はその言葉に頷いた。
「あの要塞で。全てを決する」
「陛下、御言葉ですが」
 部下は自信に満ちた声で言う彼にあえて問うた。
「あの要塞は最早防衛にも攻撃にも」
「それはわかっている」
 だがそれに対するトリスタンの返事は意外なものであった。
「では何故」
「それもすぐにわかる」
「すぐにですか」
「そうだ」
 言い切っていた。言葉も強かった。
「すぐにな。では仕掛けるぞ」
「はい」
 部下達はそれに頷いた。
 トリスタンの軍はコノートに向かった。すぐに帝国軍が動いたとの報告が入って来た。
「その数は」
「十個艦隊です」
「そうか。一気に勝敗を決するつもりだな」
「敵の司令官はモードレッド司令です」
「モードレッド司令か」
 彼も知っている人物であった。
「第四帝国では第十七艦隊の司令官だったな」
「ニーベルングの腹心だったと記憶しておりますが」
「そうだ。中々手強いぞ」
 モードレッドが決して凡庸な人物ではないことをトリスタンは知っていた。
「艦隊司令として的確な判断を持っている」
「はい」
「そして統率力もある。決して楽な相手ではない」
「左様ですか」
「だが際立って優れてい
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