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朱の盆
第二章
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「それでも柔道はね」
「投げて締めてだからか」
「心配なのよ」 
 どうしてもというのだ。
「他の格闘技やスポーツより怪我が」
「心配か?」
「ええ、本当にね」
 こう言うのだった、夫にも。
 だが夫の返事は決まっていた。
「奈緒が楽しんでいるならいいだろ、心身共に鍛えられて楽しんでるならな」
「いつもそう言うわね」
「そう言う奥さんの方がおかしいだろ」
 晶子をいつもの呼び方で言っての返答だった、晶子の親戚も友人達も言うことは同じだった。だが晶子はどうにもだった。
 娘が柔道をしていることが心配だった、だがそんなある日のことだ。
 晶子は夫からその話を聞いてまずは笑い飛ばした。
「それはないでしょ」
「いや、それがな」
「本当のことなの」
「何でも急に出て来てな」
 そうしてというのだ。
「驚かせてくるらしいな」
「そうしてくるの」
「ああ、夜道から急に出て来てな」
「襲ったりしないの」
「それならこんなに軽く言うか」
 それこそと言う夫だった。
「驚かせるだけだよ」
「それでなの」
「ああ、だから奥さんもな」
「目の前に出てきたら」
「驚いて腰を抜かさない様にな」
 決して、というのだ。
「その妖怪が出てもな」
「というか妖怪って本当にいるのね」
 晶子は夫に眉を顰めさせて言った。
「そうなのね」
「というか最近大阪でそんな話多いだろ」
「そういえばそうかしら」
「奈緒が行ってる学校なんかそうだろ」
「八条学園?」
「ああ、怪談話が百はあるって言われてるんだぞ」
 そこまで多いというのだ。
「あそこは世界屈指の心霊、怪談スポットなんだぞ」
「そうだったのね」
「娘の学校のそうした話位知ってるよ」
「そうしたお話興味なかったから」
 晶子は妖怪や幽霊の話には興味がない、そうしたジャンルの漫画や小説も読まない。だから八条学園の話も知らないのだ。
「だからね」
「それでもこれでわかったな」
「あの学校心霊スポットなのね」
「怪談も多くてな」
「そんな場所だったのね」
「ああ、それで最近この辺りにもな」
 夫は妻にあらためて話した。
「出るからな」
「妖怪が」
「ああ、朱の盆っていう妖怪でな」
「朱の盆ね」
「やたら赤くて大きな怖い顔をしている妖怪らしいんだよ」
「その怖い顔でいきなり出て驚かせるの」
「そうした妖怪なんだよ」
 それが朱の盆だというのだ。
「覚えておいてくれよ」
「ええ、出て来ても驚かない様にするわ」
 晶子は出るとは思っていなかったがそれでも夫の言葉に頷いた、しかし本当に妖怪の話は信じていなかった。
 だからある休日奈緒の服を買う為に難波まで出てその帰りにだった。
 駅から家まで帰る途中にだ、一緒に夜道を歩いてい
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