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真田十勇士
巻ノ百三十四 寒い春その三
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「若しここで大坂に残れば」
「戦ですな」
「そうなってな」
「そして今度こそですな」
「豊臣家は滅ぶわ」
 有楽は自ら茶を煎れ長頼に出し自分も口にした、そうして茶を飲みながらそのうえでだった。彼なりの大坂のことを案じ続けていた。
 その大坂にも春が来た、だが春になってもだった。
 城の雰囲気は悪かった、実に殺伐とし些細なことで刀を抜く様な者が多くなっていた。その状況を見てだった。
 幸村は苦い顔でだ、十勇士達に言った。もう真田丸もなく本丸の中にもうけられた彼の部屋の中でそうした。
「浪人達もどんどん去りな」
「十万いたのが六万を切りましたな」
「今は五万と八千程でしょうか」
「随分と減ったものです」
「戦がはじまった時から見れば」
「大坂の有様、特に裸城になったのを見てじゃ」
 どうして浪人達が多く去ったのかも話す幸村だった。
「それ故でじゃ」
「豊臣家を見限ってですな」
「そのうえで、ですな」
「多くの者が去り」
「そして残った者達もですな」
「殺伐としていますな」
「この様な有様でどうなるか」
 浪人達から見ればというのだ。
「敗れるな」
「ですな、だからですな」
「もう他に行くあてもなく」
「今もまだ残っている者達ばかりですが」
「その者達もわかっていますな」
「また戦になれば」
「敗れるのは必定、死ぬ様なものじゃ」
 敗れてそしてというのだ。
「だからじゃ」
「この様にですな」
「城の雰囲気が荒みきっていますな」
「些細なことで刀を抜いている」
「そんな有様になっていますな」
「そうじゃ、何とも嫌な状況じゃ」
 幸村は苦い顔で述べた。
「大坂の今はな」
「全くですな」
「この様な状況が続きますと」
「見ている方も嫌になります」
「一体どうなるか」
「甚だ不安ですな」
「このままではじゃ」
 さらに話した幸村だった。
「戦になる前にな」
「自ら割れますか」
「兵の者達が」
「そうしてどうしようもなくなり」
「豊臣家自体も」
「うむ、どうしようもなくなるのは同じじゃ」
 兵達だけでなく豊臣家もというのだ、兵達がそうなって家もそうならない筈がないというのだ。
「分かれるなり何なりしてな」
「そしてですな」
「そのうえで」
「動くこともままならぬまでになるやもな」
 そこまでになるかもというのだ。
「下手をすれば」
「ううむ、そうなってはです」
「どうにもなりませぬな」
「家自体も続くかどうか」
「わかりませぬな」
「豊臣家が生きる道はある」
 それは否定しない幸村だった。
「この城を出ることじゃ」
「前から言われている通りにですな」
「茶々様も江戸に入られ」
「他の大名家と同じ様にする」
「そうすればですな」
「まず
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