十二本目
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込んだ。
震える手で、閂をかける。
「(閂だけじゃ、直ぐに入られる…)」
ティッタは、クローゼットを開き、その一番下の戸棚を開けた。
そこから、大振りのナイフを取り出す。
辺りを見回し、壁に架かった弓を握る。
バルコニーへ出ようとした時。
扉が蹴破られた。
「もう追いかけっこは終わりか?」
男は部屋に踏み込みティッタが持っていたナイフを弾き飛ばした。
そうして、一閃。
鋒は、今度はティッタの胸元をかすった。
彼女は弓を抱き込み、胸元を隠す。
「ティグル様…」
「なんだ?お前畜生の分際で飼い主に想いをよせてでもいるのか?」
男が剣を…剣のようなポケモンをティッタに突きつける。
「こんな時に居ない主など、何になる?
お前は捨てられたんだよ」
ティッタは、男を真っ直ぐに睨み付ける。
「ティグル様は、ティグル様は…きっと来る!」
「勇ましい事だ。精々俺の下で喘ぎながら主人の名を呼ぶがいい」
男は、ティッタの肩を掴んだ。
彼女は、泣きそうになりながら、心の中で、ティグルの名を呼んだ。
唐突に、風が裂かれた。
続いて、鈍い音。
そして…
「っアアアアアァァァァァァァァ!?」
悲鳴。
ティッタが目を開けると、黒ずくめの男の手に矢が突き刺さっていた。
「ティッタ!」
そうして聞こえてきたのは愛しい主の声。
「ティグル様!」
ティグルは、オレンジの体に白い鬣の獣を走らせ、向かってくる。
「飛べ!ティッタ!」
彼女は、その言葉に従い、バルコニーの柵を飛び越えた。
だが、そこで、少年の駆る獣が、躓いた。
少年は、己の身を省みず、その小さな体躯を跳躍させた。
空中で、ティッタの体を抱き抱え、直ぐ様自分を下にする。
二人が、来る衝撃に強張らせるが、来たのは、優しく包み込む風だった。
「娘一人の為に無茶をするものだ全く」
辺りに響く凛とした声。
放ったのは、白銀の髪をなびかせる、戦乙女だった。
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