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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
守りたいもの
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かけた言葉は喉に突っかかって途切れた。

「私は止めようとしただとか、本当は彼を影武者にする気は全く無かっただとか、そんなことを言ったって信じてもらえないのはわかっている――謝っても許してもらえるとは思っていない、だが……お前達が木ノ葉を必死で守るのは、白眼でちゃんと見えていた。そしてお前の姿にヒザシを重ねて――やっと思い出したのだ」

 土下座をしたまま、日向ヒアシの語る言葉を、ネジは呆然と立ち尽くしながら聞いていた。
 白眼を発動させて娘と、そして弟の忘れ形見である甥を探していた時、金髪の少年を守って腕を貫かれた彼が目に入った。娘が彼女の同期と、昏睡している二人の少年と共に宗家の屋敷にやってきた時には、彼が回天を発動して二人の少女を守るのが見えた。
 その姿に思い出したのだ。分家として宗家を守るのではなく、弟として兄を守るんだと、一度でいいから宗家と分家の運命に逆らってやるのだと、これもその反抗のうちだと。そう言った弟の姿を。

「謝っても許してもらえるとは思っていない。これは私の自己満足だ、だが――――すまなかった……!!」

 ナルトの強さはネジの強さとは違う強さだ。ナルトの強さはひどく柔軟な強さなのだ。全てを受け入れ、それでいて染まらず、歪まず。全てを目に捉えながらも、その瞳は余所見をせずに真っ直ぐ前をみつめ。なんど打ちのめされても立ち上がり、愚かしいまでに他人を信じ、他人のために全力を尽くせる――そんな強さを、ネジは目にしたから。
 その白眼で、とくと目に焼き付けたから。
 だからこそネジは信じられた。
 もっと早く言ってほしかった――もっともっとヒザシのことを知りたかった。物心がついたかつかないかのうちに死んでいった彼のことをもっと早く知りたかった。憎しみに身を焦がすのは辛かった。死んだ父はさぞかし無念だったろう、そう思いながら憎しみの火に息を吹きかけ続けた。
 十年間憎しみ続け恨み続けた宗家への、どろっとした重く黒い感情は依然として心の中に残ったままだけれど、それは隅っこへと追いやられていった。隅へと、隅へと、そしてそれはいつか消えるだろう。

「顔を上げてください、ヒアシさま」

 もしかしたらこれは真実ではないかもしれない。それを検証する術はどこにもない。ネジがただこの言葉を、この話を信じていたいだけかもしれない。
 それでもこの言葉だけでネジはずっと救われた気がした。

「今は木ノ葉崩しが起こっています――どんな話があってもそれは後回しです」
「……ネジ」

 つう、と頬を涙が滑り落ちる。
 ネジの口元に、穏やかな笑みが浮かぶ。

「父上は木ノ葉を守って死にました。だから父上が命をかけて守ったこの里を壊すわけにはいかない――」

 ざあ、と風が拭き、木々が揺れる。

「今度は
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