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悲劇で終わりの物語ではない - 凍結 -
マシュの心象風景T
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う存在を渇望する一人の王。

 ソロモン王は天より数多の恩恵を与えられ、万能の王に相応しい力を有していた。
 だがそこに自由はなく、機械の如くただひたすら王として孤高に存在していたのだという。

 生前では叶わなかった人並みの自由と心を求め、聖杯の力により人間となった存在。
 それが我らがカルデアに勤めるロマニである。


─人が当たり前に享受することができる喜怒哀楽の感情を私は感じることができない。いやそもそもその自由も私は持ち合わせていないのだ……─

 孤独の王の独白は今なおマシュの前で続く。
 ただこれは過去の記録、それもウィスの記憶だ。


─今のソロモンのように自分とは何者なのかを追い求め続けることが人間であることだと思うぜ─

 これはウィスと神々の手により創られた傀儡である王との出会いを記した記憶。

 これが生前のドクター。
 マシュは何とも言えない感慨深い思いを浮かべてしまう。



─またしても視界が暗転する










─己の主であるソロモンが死んでもなお生き続けるか─

 悲しげに顔を伏せながらソロモンの遺体を見据えるはウィス。
 彼の前には静かに眠るソロモン王の姿が。

 恐らくこれはソロモン王が天へと万能の指輪を返還した後の出来事だ。
 
 自身の前ではウィスが厳し気にソロモン王の死体越しに何かを見ている。
 ソロモン王の肢体に巣くう何かを。





……ああ、そうか

彼は、ウィスはこの時知ったのだ

魔術式の存在を、『人理焼却式・ゲーティア』の存在を……



─景色が塗り替わる









─うぅぅう…?ウィス、そこにいるのか…?─

─ええ、ここにいますよ、ネロ─

 人里離れた寂し気な場所にて力無く倒れるはローマ帝国第五代皇帝であるネロ・クラウディウス。
 だがそこに見えるのはいつもの明朗闊達で笑顔を振りまく彼女の姿などではなく、ただ死を待つ女性の姿であった。

 目の前の彼女に覇気は無く、実に弱々しい。
 自決しようと試みたのか身体からは血を流し、今にもその命を散らしてしまいそうである。


─なあ、ウィス…、余の命が尽きるまで傍にいてくれるか?─

─ええ、勿論です。ネロは一人ではありません─

 ウィスはネロの求めに応じ、彼女の身体を自身の服が彼女の血で汚れるのも厭わず抱きしめた。
 まるで壊れ物を扱う様に、優しく、彼女を安心させるかのように。

─そうか…ヶ?ッ、ヶ?ッ…!余は…余は嬉しい…!─

 苦しみながらもネロはウィスに笑う。
 対するウィスもその瞳に悲しさを映すも、ただネロを抱きしめ続けた。






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