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真田十勇士
巻ノ百三十三 堀埋めその八

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「まことにな」
「左様ですな」
「よくもまあ頷いたものです」
「そしてその結果です」
「こうなっています」
「愚の骨頂、これでじゃ」
 もう本丸の堀まで埋められだしていてそこの櫓等も壊されている、裸城になるのも時間の問題だった。
「豊臣家は大坂から出ざるを得なくなる」
「裸城では護れませぬからな」
「どうしようもありませぬな」
「それではですな」
「出るしかありませぬな」
「元々幕府は大坂に大きな城を置くつもりはない」
 大坂は欲しいがというのだ。
「それよりも町を広く大きくしてじゃ」
「そうしてですか」
「栄えさせたい」
「それが幕府の考えですか」
「だからああして一度堀も何もかもをなくしてじゃ」
 そうしてというのだ。
「後で適度な大きさの城にしてな」
「そこを西国の政の要とし」
「大坂の町を栄えさせる」
「それが幕府の考えだからですか」
「こうしておるのじゃ」
 城を完全に裸城にしているというのだ。
「豊臣家を出さずを得なくさせてな」
「そうしてですか」
「そのうえで、ですか」
「代わりに大坂に入り」
「そこから西国をも万全に治めるつもりですか」
「そうした考えじゃ、もうこれで普通に考えればじゃ」
 ここでこう前置きした兼続だった。
「豊臣家は大坂を出るが」
「それでもですか」
「若し大坂に残ろうとすれば」
「その時はですか」
「浪人衆をどうするかもあるしな」
 抱え込んだ十万にも及ぶ彼等がというのだ。
「それをどうするか、そしてまた茶々殿が意地を張れば」
「そうなってしまえば」
「その時はですか」
「戦ですか」
「そうなりますか」
「そしてあの方はな」
 茶々、彼女はというと。
「おそらくな」
「意地を張られますか」
「大坂から出られぬ」
「裸城になろうとも」
「それでもですか」
「あの方の意地は天下一品じゃ」
 そこまで意地が強いというのだ、茶々は。
「だからな」
「それで、ですか」
「大坂から出られず」
「そしてですか」
「そのうえで」
「また戦じゃ、そして裸城で戦えば」
 そうすればというと。
「言うまでもなかろう」
「はい、最早です」
「勝てるものではありませぬ」
「到底」
「大坂は大坂城の護りが強かったですが」
「その護りがなくなれば」
「もうお話にもなりませぬ」
 上杉家の者達も兼続に言う。
「その時は」
「どうしようもありませぬな」
「裸城で戦えば」
「その時は」
「負けるしかないわ、そして負ければじゃ」
 そうなればというと、豊臣家が。
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