暁 〜小説投稿サイト〜
IS〜夢を追い求める者〜
最終章:夢を追い続けて
第69話「天才の姉、努力の妹」
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撃で少し息が乱れた程度。すぐに整う程度しか疲れていない。

「(……だと、言うのに……)」

「はぁ……はぁ……っ……!」

「(どうして、“何かある”と、そう思えるの……!?)」

 いくら成長が著しくても、最初の実力差は歴然だった。
 戦闘を続ければ続ける程、不利になるのは箒だ。
 実際に、こうして箒の勝ち目はほぼ完全に潰えた。
 どうあっても、油断さえしなければ負ける事はない状況だった。
 そして、現在の束は一切の油断や慢心をしていない。
 ……だと言うのに、束は全くそれで終わると思う事が出来なかった。

「……なぜ、諦めないのか」

「っ……!」

「姉さんは今、そう考えていますね?」

 図星だった。ただ、厳密には“何を原動力に”諦めないのか、だが。

「……単純で、聞く人によっては馬鹿らしい理由だ。……秋十は、これ以上の苦境を諦めずに過ごしてきた。なら、それをどうする事も出来ない……いや、苦境の一端を担っていた私が、この程度で挫ける訳にはいかない」

「………」

「そして、そんな苦境を乗り越え、強くなった秋十に、私はただ追いつきたい。……そんな想いで、今立っている。……それだけだ」

「……なるほど、ね」

 箒の言葉を聞き、束は一時戦闘を中断して少しの間考え込む。
 確かに、聞く人によっては自分勝手で馬鹿らしい理由だ。
 だが、その理由を以ってどれほどの原動力を見せるのかも、人による。
 詰まる所、それだけ、箒は覚悟を決め、そして実際に見せているのだ。

「……馬鹿になんか、出来ないよ。それだけ、箒ちゃんの想いは強い」

 それを理解し、束は構えなおした。
 その瞬間、箒も理解する。……ここからが、本当の本番だと。

「……その信念、その想い。私の全力を以って受け止めてあげる。……だから箒ちゃん」

「………」

「……乗り越えてね?」

 ―――その瞬間……。



     ギィイイイン!!

「ッ……!?」

 箒は、“体が勝手に動く”と言うのを実感した。

「(早い……!少しでも鍛錬を怠っていたら、今ので負けていた……!)」

 何度も鍛錬を重ね、仮想敵に束を据えて何度もシミュレーションをしていた。
 また、秋十の伝手で高町家の面々とも手合わせを何度もしていた。
 ……その事もあり、束の不意打ち染みた全速力の一撃を受け止める事が出来た。

「シッ!」

「ッ!!」

     ギギィイン!!

 体勢を立て直すと同時に迫る束の斬撃。
 それを、何とか受け流す事で、直撃を避ける。
 だが、それだけで箒は大きく後退する。

「はっ!」

「くっ……!」

 そこへさらに追撃が迫る。
 
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