十本目
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ない日はなかった声。
「通せ。俺はマサラタウンへ帰る」
「自分の立場を忘れたか?
取り敢えず理由を話せ」
端的に、明快に。
「マサラタウンへ、ロケット団が向かっているらしい」
「証拠は?」
「あると思うか? だが、ロケット団ならやりかねん。
森を焼くような輩だ。
マサラタウンが燃えてからでは、遅いんだ!」
「マサラタウンへ戻って、お前は何をする?」
「戦うに決まっているだろう!」
「どうやって?」
「どうって…」
「お前の弓の技量は認めよう。
だが、お前は一人だ。街を襲おうという規模の敵を前に何ができる?
無策で飛び込むのは愚者の所業だ」
「んなこたぁ!俺が一番わかってんだよっ!」
「それでも行くのか?」
「なにか、なにかできるかもしれないだろう!」
「そんな無計画で無思慮な人間が、本当に何かを成せると?」
「それでもっ!」
「脱走は死刑だと言ったはずだ。それほどに死にたくば、今ここで果てるか?
ライトメリッツで死ぬのもマサラタウンで死ぬのも変わりあるまい」
アリファールの鋒が真っ直ぐに俺に向く。
「どうしても、通してくれないのか?」
「私が何を気に入らないか、わかるか?」
突然、子供を叱るような口調になった。
「私と相対した時、少しでも有利に事を運ぼうと冷静沈着に動いたお前が、何故無計画に、感情的に動く?」
「何を言って…」
無計画?何を計画しろと?
答えられねば、俺はエレンに斬られるだろう…
いや、待て、何故エレンはこの状況で俺を斬らない?
まさか…まさかっ…!
『私に仕えないか?』
俺を生かすチャンスは、与えていたじゃないか!
機会は、一度きり。
失敗すれば、さすがに斬られるだろうな。
「エレン、頼みがある」
もう、後はない。
「兵を貸してくれ。お前が探していた森を焼いたロケット団も居るかもしれんぞ?」
さぁ、これでどうだエレオノーラ・ヴィルターリア!
対するエレンは目を丸くした後…
「はは!はははは!ははははははははは!」
腹を抱えて笑った。
「いやはや…なんとも、清々しい程に図々しいなお前は」
その嬉しそうな顔の示す返答は…
「貸せと言うか。いいだろう。当然ただではないぞ」
「いくらだ?」
「貴様の故郷の町全て」
「確約はしかねる。だが、オーキド博士ならば、きっと了承するだろう」
「では決まりだな!」
エレンがアリファールを鞘に戻した。
そうして、視線を、俺達の後ろへ向けた。
そこには、甲冑を着こんだリムがいた
「リム!戦だ!ジルニトラを掲げよ!」
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