第八章 魔法女子ほのか (Bパート)
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マーカイ獣ヴェルフの、鋼のように硬く巨大な爪が、砂場の砂をかくように見るも簡単に切り裂いたのである。
本来こうなるべきは、ほのかの肉体であったが、彼女は間一髪、横っ飛びでかわしていた。
マーカイ獣は、逃した獲物へ向き直ると、地を蹴り風のような速さで跳び、再びほのかを攻撃した。
だが巨大な爪が切り裂くは空気。
単発では終わらず、さらに、ぶん、ぶん、と巨大な爪が襲うが、ほのかは、横へ、後ろへとステップを踏んでなんとかかわし続ける。
大振りの一撃を身を屈めてかわすと、その隙をついて、ひゅん、と大きく後ろへと跳躍して木陰へと身を潜めた。
木陰を使って見えないようにしながら、さらに後ろの木、後ろの木へと跳ぶ。
「くそ! ちょろちょろしやがって! どこ行きやがった!」
地を震わすような叫び声が、公園内の空気を轟かせた。
「だって、動かなかったら切り裂かれちゃうじゃないですかあ。ちょっと様子見です」
生来ののんびり口調で、こそり唇を動かすほのか。
足元、地面に不意に生じた小さな影に、ぴくり肩を震わすと、瞬時に真顔になって空を見上げた。
影、巨大な金属の塊であった。
頭上から落ちてきたそれは、一瞬にしてほのかの視界をすべて塞ぎ、地面へと落ちた。
どおおん、という音とともに、土が爆発したかのように激しく吹き飛んだ。同時に、ぎしゃああ、と金属のひしゃげる、耳を覆いたくなるような不快な音。
間一髪のところで横っ飛びでかわしていなかったら、ほのかの肉体はぐしゃぐしゃに押し潰されていたかも知れない。魔道着が身を守っているとはいえ。
土煙、視界が晴れる。
空から落ちてきた金属の塊は、自動車、タクシーの車体であった。ひっくり返って、屋根が完全に潰れてしまっている。
先ほどから公園脇に一台停車していたが、その車体であろうか。
マーカイ獣が、ほのかのいる場所の見当をつけて、野球ボールのごとく軽々と放り投げた、ということだろう。
青ざめている、ほのかの顔。
ぶるぶると震えている、ほのかの全身。
自分が下敷きになっていたかも知れない、という恐怖のためではない、
それよりも、自分のことよりも、むしろ、
「も、もしも中に人が乗っていたら、どうなっていたと思うんですかああ!」
そう、ほのかの震えは、人の生命を大切に思う優しさからくる怒りのあらわれだったのである。
マーカイ獣の冷血無情っぷりに、憤り、怒鳴り声を張り上げていた。
「お、おい、ほのか!」
ニャーケトルの呼び声に、示す視線に、彼女は屈み込みながらタクシー運転席を覗き込んだ。
「人がいたああああ!!」
ひしゃげた隙間から見える運転席に、ヒゲ面
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