暁 〜小説投稿サイト〜
越奥街道一軒茶屋
灯愛
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合なんでさぁ。

「それで何とか抑え込んでいたのですが、彼は、ある日突然狂暴になって……。それからは、本当に地獄でした」

 旦那を止めようとした村の人が、旦那の素手でむごい目にあった、と娘は話しやした。死人が何人も出て、結局旦那の逃亡を許しちまったと。

「私は、彼の動向を離れて追うことにしました。それをしたから何ってわけでもないのですが、そうしなければいけない気がして……」

 根拠のない使命感ってやつらしい。それに突き動かされる人ってのは、意外と多い気がしやす。

「人の一生が最初っから決まってるなんてのはあり得ないと思いやすが、あんたさんのそれは運命とか、そういった類らしい。自分の使命だと思うんなら、あの、もうどうにもならない男の行く末を見届けるのは、きっと間違っちゃいねえんでしょう。あっしにできることはなにもありやせんねえ」

 話は、こんな感じに締めくくるのが一番でしょうなあ。
 男を見失うといけないってんで、そのあと娘は店を後にしやした。

 二人とも数奇な流れにいるみたいで、他の人とはちょっと違った雰囲気をもってやしたねぇ。
 これ以上のことは、あっしには知る由もありやせん。ただ一つわかるのは――

 執念に関わったものが、幸せな道をたどることはない

 ってことだけです。
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