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真田十勇士
巻ノ百三十二 講和その九

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「あの者もじゃ」
「真田殿も」
「あの御仁もですな」
「召し抱える」
「そうされますか」
「因縁はある」
 それこそ最初の上田攻めの頃からだ、赤備えとのことを考えると三方ヶ原以来のものとなるだろうか、
「しかしな」
「それでもですな」
「あの才は惜しい」
「だからですな」
「ここで大坂を出れば」
「やはり大名としてじゃ」
 この格でというのだ。
「召し抱えたい、しかしな」
「どうもです」
 幸村にしきりに文を、弟の政重と共に送りそのうえで幸村に降る様に言っている正純が言ってきた。
「あの御仁は」
「幕府にはじゃな」
「つかぬおつもりです」
「まつろわぬか」
 家康は真田丸を見たまま言った。
「あの者は幕府には」
「まつろわぬ、ですか」
「まつろわぬ民、まつろわぬ神という言葉があるが」
「古事記や日本書紀に出て来る」
「そうした者か、幕府にどうしてもな」
「従わぬ」
「そうした者であろうか」
 こう言うのだった。
「あの者、そしてな」
「家臣もまた」
「十勇士か、どれも見事な者達じゃが」
「やはりまつろわぬ」
「そうした者達か、幕府にはな」
「つかぬ御仁達ですか」
「そう思う、だからな」
 幸村、そして十勇士達もというのだ。
「あの者は無理か、しかし考えてみれば」
「といいますと」
「あそこにおる者達は大抵そうなのか」
 秀忠に言った言葉だ。
「大坂に入った者達は」
「そうかもな
「まつろわぬ者達ですか」
「天下のそうした者達が大坂に入りじゃ」
「そうしてですか」
「幕府に死ぬ為の戦を挑む」
 こうも言った家康だった。
「そうやもな」
「死ぬ為のですか」
「あの城を墓にしてな」
「大坂城を」
「そうも思えてきた、惜しい者達ばかりじゃが」
 それでもというのだ。
「まつろわぬ者達でじゃ」
「死ぬ為にですか」
「大坂に入ったのやもな」
 幸村も他の者達もというのだ。
「若しやな」
「そうだとすれば」
 大久保が言ってきた。
「我等はです」
「戦いそしてじゃな」
「あの者達に素晴らしい花をやることです」
「花をか」
「戦の華を」
 そうした花をというのだ。
「そうすべきです」
「華をか」
「華々しい最期を」
「そうしてやるべきというのじゃな」
「それがしそう考えていますが」
「そうじゃな、出来ればそうしたくはないが」
 その時はとだ、家康も答えた。
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