「ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも……わ、た、し?」
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で待っていたのは、もちろんその店主……ではなく。
「お帰りなさい、ショウキ」
先程までアルゴとの話題の渦中にあった、黒髪のNPCだった。まるで店番のように……というより、事実として店番として、一見して無表情ながらも実は張り切った表情を見せながら、リズベット武具店に立っていた。いや、もはやNPCの少女というべきでもなく。
「ただいま、『プレミア』」
「はい」
――先日、ユイの手によって『何も設定されていない』という解析がなされた少女へ、リズはこの店でバイトをしないかと持ちかけた。設定がないのならばどんなキャラクターにもなれると、知ったような、けれども熱意のある口を聞いたリズの申し出に少女は頷いて。もちろん名前まで設定されていないと呼び方に困ると、アスナにユイも合わせて皆で名前を考え、少女が満足したものは。
プレミア――幕開けを意味する言葉だった。
それからは暇な時はリズベット武具店のバイトとして、たまに道行くプレイヤーにクエストを頼みながら、少女はこの世界を生きている。何もない少女から、プレミアという一つの生命になるために、何事も学びながら。
「では、ショウキ。ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも……わ、た、し?」
「……お帰りなさい、だけでいいから。な?」
「こう言うと男の人は喜ぶと聞いたのですが、ショウキにはあまり効果がないようですね。言葉は難しいです……」
……たまに、よく分からないことまでどこかで学んでくるものの。それはそれで彼女の愛嬌だろうと考えていれば、背後にいたアルゴから肩をポン、と叩かれた。
「……ずいぶん、イイコトを教えてるみたいだナ?」
「いや、違っ」
「アルゴもいましたか。つまり、お帰りなさいです」
「プレミアは優しいナ。誰かさんに襲われそうになったら、すぐにオネーサンが拡散してやるから、安心しろヨ」
「襲われそうとは、どういうことですか?」
もちろん希代の情報屋がこんな鮮度抜群のネタに食いつかない訳もなく、ただニヤニヤと笑いながらも、アルゴは我が物顔でリズベット武具店内へ侵入していく。そうして来客が増えたことから用意した椅子に座りながら、さらにプレミアへ教育上よくないことを吹き込むかと思われた瞬間、店内に用意されたログイン用のスペースが光って。
「プレミア、お待たせー……って、ショウキにアルゴも来てたのね。何かあった?」
「いえ。お客様の数は0です」
「そ、そう……ほらショウキ、何そんなとこ突っ立ってんのよ」
嘘など言わないプレミアからの無慈悲な現実を叩きつけられながらも、店主が随分と重役出勤してきたらしく。相変わらず面倒そうに半脱ぎにされたツナギを着たリズに促され、ショウキも話が流された
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