閑話2 ある姉妹のいさかい(前編)
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そう気づいたのは、兄さんが当時作っていたISのマニュアルを手伝うついでに、兄さんが組んでいたプログラムに関わった時だったかな。
私の手を握って喜んでくれて。
数日後、私に銀のペンダントに入れたISをこっそり渡してくれた。
仕事外で渡してるから、親と姉には秘密にね。
何気ないその言葉に、優越感を感じたのは、秘密だ。
そして、記憶は、『あの日』を思い出す。
姉さんと私が、決定的に決別した、『あの日』に。
?????◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
その日は、朝から慌ただしい日だった。
両親からは学校を休めと言われ、部屋に引きこもるよう言われた私。
何もわからない私は、少しでも情報を得ようと苦心するも、あらゆるネットワーク上の情報源は無しのつぶて。
兄さんに連絡しても、返事がこない。
そんな時間が暫く続いただろうか。
微かに、兄さんの声が聞こえた。
こう言うとアブナイ人みたいだが、生まれてから今まで変わらない愛する人だ。多分その時は乙女パワー的な何かがあったんだろう。
とにかく、太郎にいが来たことを感知した私は、急いでその声の方へ向かった。
私が、この世で一番安心出来る場所に。
その時、私は初めて知った。
太郎にいが以前言った、自分は強くはない、という意味を。
強くありたいと想う、覚悟を。
兄さんの状態は、一言で言うなら『死ぬ寸前』であった。
全身の包帯からは血が滲み、左手と右足は骨が折れたのか、ギブスで固めてあった。
普段整えてある髪は乱れ、額に怪我をした影響か、右目が血で赤く染まっていた。
それでも倒れず、電話口でつっかえながらも何かを伝える兄さんの姿に、私はただ、黙ることしかできなかった。
その後、私に気付いた彼が、話は休んだ後にな、と言って自室に入った事は気にならなかった。
ただ、何か怪我をした彼のためにできる事をしたかった。
ただ、それだけだった。
なのに、家族(更識家)は私の気持ちを裏切った。
私と同じく、太郎にいを慕う姉に相談するため、普段日中いる、当主用の部屋に向かった時だろうか。
『あの言葉』を聞いたのは。
「やはり、太郎君は優秀だ。不確定情報を含めてこちらに情報を投げてくれたおかげで、我が一族の株は大いに上がった」
まるで太郎にいを優秀な『駒』のように言う父の言い方にも勘がさわったが、問題は次であった。
「だけどお父様、まだ太郎兄様は我が一族に心を許していませんわ。だから『あの件』許して頂けません?」
『あの件』ってなんだろう?
当時の私は思った。
その答えは直ぐに分かった。
分かってしまった。
「ふむ…………まだ早いとは思ったが、今
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