閑話2 ある姉妹のいさかい(前編)
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は酷く荒れていた。
曲がり角でたまたま、使用人が私の事を『失敗作』と言っていたのを聞いたから。
だから幼い私は、その後顔を出した太郎にいに向けて、心の苦しさからつい当たってしまった。
兄さんも心の中では私の事を見下してるでしょ。
出来の良い姉さんと違い、どんくさい私を教えるのは面倒くさいと思ってるでしょとか。
今、思い返すと死にたくなる罵詈雑言を兄さんに放つ私。
兄さんは、それを黙って聞いていた。
そして、静かな声で言った。
「不器用な人間は苦労するけど、徹してやれば器用な人間より不器用な方が、最後は勝つ。」
「俺が辛い時、良く思い返す、ある野球監督の言葉さ」
太郎にいは続けた。
「俺は『何でも』は出来ないよ。勉強は束に勝てず、運動も全般になると、千冬に劣る。『何でも出来るように見せてる』のが俺の本質さ」
困ったように手を上にあげ、『お手上げ』のポーズをとりながら更に言葉を重ねる。
「二人が俺の事を尊敬してくれるのは嬉しいがね。口が悪い奴らは、『二人を利用して金儲けする屑』、『二人より劣ってるのを受け入れている敗者』とか、好き勝手言ってくれてるよ」
「そんな!そんなこと無い!」
彼女は知っていた。
家庭教師を終えた後、宛がわれた部屋で一人、勉強や筋トレに励む彼の後姿を。
私だって、姉だって、太郎にいを『そんなモノ』だなんて思った事はない。
そう、拙い言葉で彼の言葉を否定すると、彼は笑って私の頭に手を置きいった。
「だったら君も『失敗作』なんかじゃないさ」
「上には上がいる、どんなに努力しても結果が出ない。そんな時もある。実際、剣術や科学関連については、努力しても二人についてはいけない」
「でも、結果が思った通りじゃなくても、今まで自分がしてきた努力は、幻なんかじゃないよ」
「天才に敵わないから、そんな理由で、頑張る君を否定なんて、絶対にしない。させないよ」
ゆっくりと、噛み締めるように紡がれる言葉が私の頭に染み込んでいく。
染み込んだ言葉は、私の体を通り、涙として流れた。
そんな私の背を、太郎にいは優しく、ゆっくりと撫で続けた。
私は変わった。
そんな言い方をするのは少し恥ずかしいけど、少なくとも馬鹿にされて歩みを止めることは辞めた。
兄さんからの勧めで、学校の勉強以外にも色々学んだ。
誰かに言われたからではなく、自分に誇りを持つために。
いつか、ちゃんとお礼を言って、そして、太郎にいの隣に立つのに相応しい女性(ヒト)になるために。
私は胸を張って、生きていこうと心に決めた。
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私には、プロムラミングの才能があったらしい。
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