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真田十勇士
巻ノ百三十二 講和その一
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               巻ノ百三十二  講和
 砲が大坂城に向けて放たれ続けていた、だが城の殆どの者が滅多に堀を越えられぬ砲弾達を笑っていた。
「無駄なことじゃ」
「幾ら撃っても精々城の壁や櫓にたまに当たるだけ」
「当たった後は戦の後でなおせばいい」
「それだけのことじゃ」
「精々撃っておれ」
「そうしておるがいいわ」
 足軽達が笑って言う、だが。
 その状況を自身の持ち場から見ていてだ、後藤は腕を組み危ういといった顔で彼の家臣達に言った。
「このまま砲撃が続くとな」
「やがてはですな」
「茶々様が折れられ」
「そうしてですな」
「講和を言われるわ」
 そうなるというのだ。
「だから砲撃をする前にうって出たかったがな」
「こうして砲撃がはじまってしまった」
「しかも茶々様が震えておられてですな」
「何の下知も出せぬ有様」
「そうした状況ですな」
「こうなってしまってはどうにもならぬ」
 最早という言葉だった。
「砲弾が尽きるのを待つだけじゃ」
「若し茶々様が折れる前に尽きれば」
「その時はですな」
「攻められますな」
「それが出来ますな」
「その時はな、そうなって欲しいが」
 ここでこうも言った後藤だった。
「若し城の中、しかも茶々様のお傍に弾が落ちれば」
「この大坂城の中にですか」
「弾が落ちるとですか」
「その様になるのですか」
「まさか」
「そのまさかじゃ、若しもじゃ」
 それこそというのだ。
「そうなればもうその時点で終わりじゃ」
「いえ、大坂城の中に弾が落ちるなぞ」
「今で精々外堀を越える程度だというのに」
「それもごく稀に」
「風じゃ」
 強い風、それを感じつつ言う後藤だった。
「この風に乗せて撃てば届く弾もあろう」
「茶々様のお傍に」
「あの方は今奥御殿におられますが」
「そこまで弾が届きますか」
「そうなるのですか」
「そうやも知れぬ、それで茶々様のお傍に落ちれば」 
 その砲弾がというのだ。
「それでこの戦が終わるぞ」
「講和ですな」
「それも幕府の言うままの」
「それで終わりますな」
「それは負けと同じじゃ」 
 幕府の言うまま講和してはというのだ。
「だから危うい、届かないことを祈るわ」
「大砲の弾が茶々様のところまで」
「奥御殿まで」
「何とかな」
 こう言ってそしてだった、後藤は城への砲撃が続く状況に危惧を感じていた。それは幸村はさらに切実だった。
 砲撃が続く中でだ、彼は十勇士達に問うた。
「守りはそこまで厳重か」
「はい、非常にです」
「我等も何とか出ますが」
「その都度十二神将だけでなくです」
「伊賀者、甲賀者が総出で出ます」
「そうして大砲を破壊するまでは出来ておりませぬ」
「その動き
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