暁 〜小説投稿サイト〜
ソロモンの少女
よるの夢こそまこと
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灯のみ。

 ポンポンコロリ、チンコロリ、ピーヒャラピーヒャラ、カラクリヒョロヒョン♪

 この場所はいったいどのくらいの奥ゆきがあるのか? パッと見わたした感じだけでも香澄の通う学校の校庭と同じか、それ以上の広さがありそうだ。

 チンコロチンコロ、パラッパラッパー、コラムボンボン、カプカプヒュー♪

 そして祭りの囃子と喧噪。ムッとする人いきれがあたりをつつむ。
 だれもいないというのに。

「う〜ん、これはかなり不気味ね」

 とりあえず周りの屋台を見て回る。たこ焼き、焼きそば、金魚すくい、射的といった定番のものから、海老すくいや子亀すくいといった変わり種。ケバブ、ピロシキ、スパボー、フィッシュ&チップスなど。ずいぶんと異国情緒にあふれたラインナップだ。

 場所が場所だけに人の肉や骨といった猟奇的なシロモノが売ってたりしないかと思ったが、その心配はないようだ。

「りんご飴って見た目はかわいいし、美味しそうなんだけど、食べにくいのよねぇ。あ、魚の塩焼き。美味しそう。んん? アユのほかにもイワナとかヤマメとか、ウナギまである。川魚のオンパレードね」

 人ごみはきらいな香澄だが、お祭りの雰囲気自体はきらいじゃない。
 この不気味な無人の喧騒も、なれてくればただのBGMだと思える。
 自由気ままに屋台めぐりを続ける香澄。すると見なれない文字を発見する。
 羊肉泡莫。
 屋台の看板にはそう書かれている。いままで嗅いだことのないお肉と香辛料の匂いが鼻をくすぐり、食欲を刺激する。

「羊ってあの羊よね。ラム肉よね。なんて読むのかしら……」
 
 食べてみたい。けれど店に人の気配はあっても人の姿は見えず、サイフも身につけてないことに気づく。
 こういう場所とはいえ、ただで口にすることを香澄の倫理観がゆるさなかった。

「ヤンルーポーモーだよ、お嬢ちゃん」

 後ろからの声にふり返ると、そこに猿がいた。
 赤茶色の毛におおわれた体に、真っ赤な顔。身長一メートルくらいの猿が、手にとっくりを持って立っている。

「そいつはヤンルーポーモーといって、いろんな薬味をぎょうさん入れた、羊の煮込みじゃよ」

 その猿が実に流暢な日本語で話しかけてくるではないか。

「めんこい娘じゃ。酒の相手をしてくれたら、おごってやってもいいぞい」

 そう言って手にした徳利を揺らして見せる。

「お酒!?」

 一瞬、小鳥を目前にした猫のような顔になる香澄。
 現在中学二年の香澄だが、祝いの席や父の晩酌につき合った時などに、アルコールをたしなむ習慣をもっている。

「そうね、せっかくだからお相手するわ。いろいろ聞きたいこともあるし」
「ふぉふぉふぉ! そうこなくては!」

 木製の杯を手渡
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