よるの夢こそまこと
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んじゃないかしら?」
「それは、いやだね…。て、香澄って好きなのは最後に食べる派だったんだ」
「それは料理にもよるわね。ビーフシチューのお肉はご飯といっしょに食べたほうが美味しいし、ケーキにのってる板チョコや砂糖菓子は最初に食べるけど、月見そばの玉子は最後に食べる主義よ」
学校に着くまで、たあいのない会話が続く。
学校に着けばきのうと同じ繰り返し。学生の義務を淡々とこなすのみ。
登下校の時のおしゃべりと、一人で空想にふけったり本を読むことくらいしか興味のなかった香澄だが、今は少しちがう。
〈夢〉世界でのできごと。あれは〈夢〉であって夢ではない。
昨夜は心の準備ができていなかったが、次はちがう。
今夜も行こう。行けるはず。授業は真面目に受ける主義の香澄だが、この日だけはいささか上の空だった。
そして夜。
あかね色に染まった世界。西と東の空、両方に橙色の太陽が見える。
最初に来た時は昼と夜の半々の空。次はありえない巨大な満月。そして今回はふたつの――
「これってたぶん両方とも夕日ね。だって赤っぽいもの」
夕日だ。
ふたつの夕日が東西の空でゆらめいている。
朝日にくらべると夕日はより赤く見える。これは大気中にただようチリなどの浮遊物の量が、朝方と夕方でちがうのが原因といわれている。
「さて、それじゃあ探検するとしますか。この〈夢〉の世界を」
今いる場所を確認。自宅前だ
今の服装を確認。普段着だ。
厚手のブラウスにデニムのパンツ。白地のストッキングで生足もカバー。これなら運動にてきしていて悪くない。
「今夜は商店街じゃなくて駅の方に行ってみましょう」
最寄の駅は香澄の家から歩いて十分ほどの所にある。このローカル線に乗って、さらに二十分ほどで やっと海と山にかこまれた観光地としての三瀬浜に着ける。
香澄の住んでる場所は三瀬浜といっても山の中にある田舎くさい場所なのだ。
ムクドリのように群れて空を飛ぶ風船のようなもの、水たまりだと思って近づくと高速で逃げ出す黒っぽいコケのかたまりのようなもの、そんな奇妙な生き物? たちの姿を確認しつつ、駅を目指す香澄の耳に軽快な音楽が流れてくる。祭り囃子だ。
線路が走る高架線下の薄暗い空間。遠目にも無数の提灯が見え、音はそこから聞こえてくる。
「むこうでお祭りなんてやってたことないのに、これは行くしかないわね」
音にみちびかれ、入ってみた。香澄の記憶ではこの高架線下の空間はほんの数メートルしかなかったのだが。この〈夢〉の中ではちがった。
トンテントンテン、トテチテトントン、コンコンチキチキ、トントテシャン♪
薄闇の中、明かりがあるのは中央の舞台と周りの屋台。それと空をただよう無数の提
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