よるの夢こそまこと
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遠の宴』で受賞し、デビューを果たす。
「これって、智子、なの……?」
ページをめくり、読んでみる。
女子高生の万葉が平安時代によく似た異世界に召喚されて――
そこに書かれていたお話は、今朝の登校中に智子が語った物語にそっくりだった。
ただ、主人公の万葉は「ごくふつう」とは思えない万能超人ぶりで、八面六臂の大活躍をしていた。
「ふぅ……」
時がたつのも忘れ、つい最後まで読んでしまった。
今は何時だろう?
まわりを見わたしても時計は見あたらない。
もっとも時計があったとしても、この世界の時間が現実の時間と同じだとは限らないのだが――。
「どうやって元の世界に帰るのかしら?」
もはやココが夢の中だとは思えない。
目が覚める。のではなく、帰る。という感覚になっている。
そういえば自分の家はどうなっているのか?
とりあえず行ってみよう。
そう思い、店を出ようとする香澄の目の前に突如として扉が出現した。
通路をふさぐような形であらわれたそれは、まるで某国民的SFアニメに出てくる『ど●でも●ア』を彷彿とさせるが、全体が淡く輝き、神秘的な感じがする。
「入れっていうわけ? ……いいわ。入ってあげようじゃないの」
ドアノブに手をかけ、まわす。そして一気に引っ張る。
開いた。
引いて開けるタイプで合っていたようだ。
そこで目が覚めた。
顔の下に読みかけの本がある。机の上につっぷして寝てしまったらしい。
だが寝起きにつきものの朦朧さはない。意識はハッキリしている。
「なんていうか、魂だけがあっちの世界に行ってるって感じ?」
時計を見ると深夜〇時を少し過ぎている。数時間の間、寝てしまったことはたしからしい。
明日も学校はある。入浴をすませて眠ることにした。空腹は感じないし、食事は朝にしっかりととろう。
とりあえず今夜はもう、あの夢の世界には行く気にならない。どうか飛ばされませんように――。
「智子、あんた才能あるわよ」
「え? あ、ありがとう。でもなに? なんのこと?」
いつもの通学路。いつもの会話。
「本よ、本。小説よ、小説。智子がいま書いてるやつ、絶対に面白いから、最後までちゃんと書いてよね」
「わわわ、わかった。最後まで書くよ」
「うん、そうしてちょうだい。書き始めたからには最後まできちんと書き終えないと、きっと化けて出るわよ」
「化けるって、なにが?」
「そりゃ物語の、小説の幽霊がよ。生まれるはずだったのに創作者の怠慢で消えちゃった子たちの怨念が化けて出るのよ」
「化けて出て、なんかするの?」
「う〜ん…、やっぱ途中で消された仕返しにゲームのデータ消したり、最後に食べようととっておいたおかずを横取りする
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