よるの夢こそまこと
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のように二階、三階、四階・・・・・・。
一〇階建て以上になっているし、香澄が小さい頃につぶれてコンビニになったはずのお店がそのままの姿で建っている。
「て、これ前と同じ夢じゃないの!?」
昨夜の夢とちがうのは空の種類くらいだ。
「夢の続きってことかしら? だとしたらあの怪物にしっかりとオトシマエをつけさせてやるわ」
意気をあげて歩き出すうちに、自分の頭が妙にハッキリと冴えていることに気づく。
夢の中に特有の、あいまいでボンヤリとした感覚がまったくないのだ。
あたりの景色など、昨夜の夢の時よりも鮮明に見渡せる。まるで霧が晴れたかのようだ。
さらに――
(なんか、いるわね……)
自分以外の生き物の気配を感じる。
ときおり視界のすみでなにかが動く。
最初はあの怪物かと思って身がまえたが、どうもちがうようだ。あのワニ頭の恐竜モドキのような敵意も迫力も感じられない。
異様な街中を進み続け、最初に怪物と遭遇した古本屋にたどりつく。
「ここに来ればいると思ったけど……、あら?」
軒先に大量のDVDや本が散乱しているのは変わらない。だが変わったことがひとつある。それは――
『原子怪獣現わる』『水爆と深海の怪物』『SF巨大アメーバの惑星』『冷凍凶獣の惨殺』『我輩はカモである』『遊星よりの物体]』『マタンゴ』『不思議惑星キン・ザ・ザ』『空の大怪獣Q』『ギャラクシー・クエスト』エトセトラ、エトセトラ――。
香澄の知っている有名な映画にまざって、聞いたことのない。だがなぜか惹かれ、ついつい手にとってしまう魅力にあふれたタイトル群。
そう。前に来た時は読むことのできなかった文章が、今はくっきりはっきりと判読できるのだ!
本のほうはどうだろう? 読むことのできなかった、あの「最新作」はまだあるのかしらと本のコーナーに向かってみる。
おぼろげな記憶をたよりに探してみるが見つからない。
店の中にも入ってさがしてみる。
外から見たよりもかなり奥ゆきがありそうだ。
天井まで届きそうな高さの本棚が通路の左右に置かれ、延々と続いている。
文庫、新書、ハードカバー、和綴じ本に分厚い百科事典。日本語以外の文字で書かれた本もいくつかある。
様々な形状。色々な言語で書かれた本、本、本――。
本の山だ。
この中から見つけ出すのはちょっと無理かも・・・。
そうあきらめかけた香澄の目に一冊の本が映る。
『久遠の宴』 松来智子
「智子?」
友だちの名が目に入る。
智子と同姓同名の作家がいるとは知らない。気になって手にとって見る。
著者欄のプロフィールを確認。
松来智子 二〇××年生まれ。K県三瀬浜市出身。第8回○○大賞〈銀賞〉を本作『久
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