よるの夢こそまこと
[6/16]
[1]次 [9]前 最後 最初
異世界に飛ばされたり、国会議事堂の地下に本拠地をもつ超法規的機関からスカウトされないかと、かなり本気で願ったものだ。
「あ、香澄〜。なにしてるの?」
「ねぇ、智子。あんた実は別の星から来た両性具有のエイリアンで、あたしに求婚してきたりしない?」
「ええと、ごめん。よく聞こえなかった。なんて言ったの?」
「ううん、なんでもない」
「求婚て、香澄…。もしかしてコクられたいの?」
「なによ、聞こえてるじゃない」
「香澄って男子に人気あるよね。いっぱいコクられてるんじゃない?」
「ないわね、一回も。街でナンパされることはたまにあっても、うちの学校の男子に告白されたことなんかないわ。それよりも智子。文章を書くことを趣味にしている人間が『コクる』とか、俗な言いかたやめなさいよ」
「え〜、ダメかなぁ?」
「ダメ。コクるだの、コクられただの、なんだか『コックリさんにとり憑かれた』みたいでいやでしょ」
「よくわからないよ…。香澄ってコックリさんしたことあるんだっけ?」
「あるわよ。でも、な〜んもおこらなくて、がっかりしたわ」
「でも、なんかおこったら怖いよね」
「そう? 狐とか狸とかが出てきて、にぎやかで楽しそうじゃない」
「コックリさんてそういうおまじないだったっけ?」
「そうよ。動物霊を召喚するの。うちはペット飼えないから、せめて霊でもいいからかわいい子が欲しいわ」
「幽霊ならエサ代もかからないし、いいかもね」
朝と同様のとりとめのない会話をしながら帰路につく。
「それじゃ、またあした」
「うん、またね」
家に帰り、いつものように一人の時間を謳歌する。
塾のたぐいにはいっさいかよっていない。
学校の授業なんて要点を記憶して、後はそれを応用するだけ。テストなんて要領さえ良ければ、いくらでも得点できる。
成績の良さなんてしょせんはそんなもの。
というのが香澄の持論で、今のところ中の上の成績をたもち、親からは塾の話は出てこない。
例のファンタジー小説の続きを読むことにした。実に読みにくい作品なのだが、いちど読み始めた小説を途中で投げ出すのは香澄の流儀ではない。
なんだかんだで続きが気になるし、なによりも、なんか負けたような気分になるではないか!
読書再開。
本来の一〇倍はあろうかという巨大な満月が中天で輝いている。
太陽のような光があたりを照らし、夜とは思えない明るさだ。
「……あたし、眠っちゃったみたいね。またヘンテコな夢を観てる」
まわりを見渡すとそこはいつもの見なれた商店街。
お米屋さんに美容院。いくつもつらなる居酒屋に喫茶店。昔はおもちゃ屋だったマッサージ店――。
いいや、ちがう。
一階建てのはずのお米屋さんや美容院がマンション
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ