暁 〜小説投稿サイト〜
ソロモンの少女
よるの夢こそまこと
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るのか?
 たいくつな授業そっちのけでおもしろい本を読んでいたいのに!
 子どもに読書の習慣をつけさせるため。と言うが、本なんて読まなくてもべつに死にはしないのだか ら、読む気のない人にむりに読ませる必要はないのでは、と香澄はつねづね思っている。
 そんなこんなで校門をくぐり、校庭をぬけ、ゲタ箱へ。

「それじゃ、また」
「うん。またね」

 智子とわかれ自分のクラスに入る。教室内にいた生徒のうち何人かとあいさつを交わした後は自分の席につき、持参した本を黙って読む。

 ………… …………。

 まわりからの視線があつまってくる。
 長い黒髪、桜色のくちびる、形のいい細いおとがい。
 嫉妬と羨望の入り交じった周囲からの目もどこ吹く風で本を読み続ける香澄だが。

(う〜ん、失敗したかも)

 香澄が読んでいるのは海外のファンタジーものなのだが、翻訳がものすごく下手なのだ。登場人物たちのセリフも、地の文章も、すべてが味気のない直訳で、小説というより英語の教科書を読んでいる気になる。
 さらにヨーロッパ風ファンタジーの世界観なのに「お武家様」「庄屋」「後生だから」などなど。妙に日本の時代劇チックな言葉が出てくる。
 さらにさらに「おどろき桃の木」「おったまげー」「すたこらさっさ」などという古臭いフレーズがひんぱんに出てくるのも脱力ものだ。

(ネタなの? ネタで書いてるの!? あ〜、ダメ。なんか読むの疲れてきた・・・)

「ふわあぁん」

 大きなあくびが出てしまう。
 ザワ……。

(あ〜、せっかくの美人なのにもったいねぇ)
(変顔もかわいいな)
(猫みたい…)

 もしマンガだったらこの瞬間。教室じゅうにそんなふきだしが浮かんだことだろう。
 やがて予鈴がなり、担任の教師が入ってきた。
 退屈な時間のはじまりだ。

 国語、数学、理科、社会、英語、体育――。
 今日のおつとめを終え、放課後をむかえる。
 夕日に照らされて赤くなる校舎、夕暮れに染まる教室、校庭からひびく喧噪・・・。
 あてもなくぶらぶらと校内をさまよいながら、もの思いにふける。
 香澄は夕方が好きだ。
 一日の中で一番好きな時間帯だ。
 逢魔が時や黄昏時なんて別名も誌的で気に入っている。
 逢魔が時。
 魑魅魍魎が跳梁跋扈する魅惑の世界……。

「会いたいなぁ、悪魔。なりたいなぁ、妖怪」

 現実はつまらない。たいくつだ。
 中学に入学して一年以上たつが、アニメやゲームの主人公が経験するような不思議イベントなど、いっこうに起きる気配がない。
 学校ごと別の世界にワープしたり、目の前に次元の裂け目ができたり、悪魔召喚アプリが送られてくることもない。
 去年の遠足で東京に行った時は、東京タワーから
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