よるの夢こそまこと
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世間一般じゃ立派なオタクでしょ」
「きめつけないで〜」
「いいじゃない、創作。胸をはりなさいよ。人の作ったのをただ消費するんじゃなくて、自分でも生産するだなんて、すごいことよ」
「そう、かな……」
「そうよそう。曹操よ、孟徳よ」
「で、どんな小説書いてるんだっけ?」
「ええとね――」
ごくふつうの女子高生・万葉(かずは)は、修学旅行でおとずれた京都で不思議な古井戸に吸い込まれる。目覚めるとそこは平安時代によく似た異世界だった。
万葉はそこで幼い帝から、自分は龍脈の力をあやつる「黄龍の姫巫女」であり、それを守護する「四魂の将」と呼ばれる四人と力を合わせ、邪神・マガツヒから京を守る存在だと聞かされる。
四魂の将。
それは荒魂、和魂、幸、奇魂の四魂をそれぞれ宿した宿命の者。
荒魂を宿すは平将門。武士団の青年で、真面目で主になった万葉に忠誠を誓う。東国出身で、つねに自分を律して鍛えながら育った頼もしい武士だが、繊細な一面もある。
和魂を宿すは崇徳院。帝の異母兄で、争いをきらって隠居した風流な少年。歌や書を愛し、音楽の才もある。
幸魂を宿すは頼豪。感情の起伏にとぼしく、理知的で冷静沈着な僧侶。けれど好奇心が強く純粋で子供っぽい一面もある。
奇魂を宿すは菅原道真。朝廷に仕えるエリート官僚。真面目で誠実。まがったことが大きらいな委員長タイプ。
万葉は彼らと力を合わせ、マガツヒの魔の手から京の人々を守っていく――。
「へぇ〜、なんかそのまま乙女ゲーにできそう。でも怨霊になっちゃう人ばっかりよね、それ」
「うん。だからお話の中で救ってあげたいの」
登校途中で会った級友とのおしゃべり。
お世辞にも人づきあいが良いとは言えない香澄の交遊関係者の中でも彼女――松来智子――はかなり親しい部類に入る。
別のクラスだが、家が近いこともあり、よくこうして一緒に登校する。
学校はきらいだが、友だちとの会話は悪くない。
きらいといえば――。
「あさどくに読む新しい本、きまった?」
あさどく。朝の読書運動の略で、香澄の学校では毎朝一〇分間。マンガ以外の本を読む決まりだ。
「うん。前に香澄がおすすめしてたのにした」
そう言って本のタイトルを口にする。
日本の有名なSF作家が編さんしたアンソロジー集だ。
「一〇分なんて短い時間じゃ、ゆっくりと本なんて読めないからね。そういうショートショートや短編が一番よ」
そう、だから香澄は朝の読書がきらいなのだ。
そんなに本を読ませたいのなら最低でも一時間は読書の時間を作って、集中して読ませて欲しい。
なんでそんなに短い時間で本を読ませようとす
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