よるの夢こそまこと
[14/16]
[1]次 [9]前 最後 最初
に先端から命中する。
ヴィネの感情表現にとぼしい獣の顔をこの時、あきらかな怒気が支配した。
「GAAAGOORuuuッッッ!」
咆哮が合図となり、香澄を取り囲んでいた戦闘員たちがいっせいに香澄に襲いかかる。
とっさにしゃがみこむ香澄。
大勢が至近距離でひしめきあう状態で目標にしゃがまれると、蹴とばすこともできない。いきおいあ まった何人かの戦闘員同士がたがいにぶつかり、おたがい非難の声をあげている。
香澄はしゃがんだまま近くの一人の股間を打って、下がらせたすき間から出て、後ろにまわりこむ。
輪の中心にいたはずの香澄の姿を見失い、さらにぶつかり合う戦闘員たち。
囲みを突破した香澄はこちらに背を向けながらうろたえている一人にあたりをつけ、全力で体当たりをする。
右往左往している集団の中に、さらに一人が巻き込まれ、ビリヤードみたいにぶつかり合って、何人かはたがいに自滅していく。
そのまま逃げだす香澄を、体勢をととのえた戦闘員たちが追いかけてくる。
ふたたび囲まれてしまう。が、またもしゃがみこむ香澄。
押し合いへし合う戦闘員たちの囲みを同じ要領で突破し、同じような人間ビリヤード戦法で相手の数を減らしていく。
これをなんどかくり返すうちに、立って動ける戦闘員たちの姿がどんどん少なくなっていく。
(体が軽い、こんなに動いてもぜんぜん疲れない。でもさすがにめんどくさいわね。大将だってまだ残ってるのに)
戦闘員ら相手に立ち回りつつ、ヴィネへの注意もおこたらない。さっきみたいな魔法がいつ飛んでくるかも知れないのだ。
(ん? そうだ! あの時みたくなんか武器でも出そうかしら。あー、でも一人で戦うのもおっくうだわ、楽したい……)
そう思った時だった。左手の親指が強い輝きをはなつ。
頭の中が熱く、冷たく冴えわたる。
言葉が自然に口から出てくる。
「疾く来たれ、二十六の軍勢を率いる地獄の君主ウァサゴ。その真の名は――」
「GYAaaaッ! ソノ先ヲ言ワズトモ、スデニオソバニヒカエテオリマス、御主(ミ・ロード)」
頭の中にウァサゴのほんとうの名前〈真名〉が浮かぶ。だが、それを口にする前に香澄の隣にウァサゴ――鱗におおわれた恐竜のような体にコウモリのような翼をはやした怪物――が、なにもない空間からにじみ出るように現れた。
この子は味方だ。あたしの思い通りに動いてくれる。香澄の本能がそう告げる。
「こいつらやっつけちゃって!」
「ショウチシマシタ」
ウァサゴの長い尾が鞭のようにしなり、残っていた戦闘員たちを根こそぎなぎ払う。まともな戦闘にすらならない。一瞬で動ける者はいなくなった。
「さぁ、次はあんたの番よヴィネ。それとも降参する?」
ビシリと指差した左
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ