よるの夢こそまこと
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子頭が悠然と片手をあげ、祭り舞台のほうにむける。
手の先から青白い光が雷のようにほとばしったかと思うと、たちまち舞台は倒壊し、ガレキの山になってしまった。
間髪入れず、また青白い光が走る。
するとこんどはガレキの山が消滅し、ライオンの顔を模した、石造りのいかにも堅牢そうな建物ができあがる。大きく開けた口の部分がバルコニーになっていて、あそこに立って群衆を睥睨(へいげい)する気が見え見えだ。
一瞬の破壊と創造。
とんでもない御業を見せつけられ、あたりはしんと静まりかえる。
「見たか妖怪ども! これがヴィネ伯爵のお力だ! おどろいたか!」
まるで自分がやったかのごとく得意げに叫ぶ戦闘員A。
獅子頭――ヴィネ――がそんな戦闘員Aになにやら耳打ちする。
「異論のある者は名乗り出ろ。と閣下はおおせだ」
水を打ったような静寂が続く。
「やれやれ、ウァサゴのやつは頭でっかちの石頭じゃったが、こんどのヴィネとやらはとんだ暴君じゃ。外つ国の悪魔にはろくなのがおらん。嗚呼、この場に美猴王や哈奴曼(ハヌマーン)がおればのう……。ちょちょちょ、ちょっとカスミちゃん。なにを――」
ヴィネたちが陣取る広場の中央に進み出る香澄。
「異論ならあるわよ」
ザワリ。
(なんだあの娘は。見かけない顔だが無謀なまねを)
(ヴィネってやつのあんな力を見てよく臆せずにいられるものだ)
(まてまて、あの娘もウァサゴやヴィネと同じく外国の悪魔では?)
(なるほど、それなら見かけぬ顔なのもうなづける)
香澄が進み出たことで、静まりかえっていたまわりがとたんにざわめき出す。
「まず、みんなが楽しんでるお祭りに後からしゃしゃって、出てけとはなによ。あんたらこそ出ていって、自分ちの庭で就任式でもなんでも挙げなさい」
青黒い戦闘員たちが香澄を取り囲むように散らばる。
「次にそこのライオン頭。ヴィネだっけ? あんたドヤ顔で変な魔法使ってたけど、上で踊ってた人はどうなったのよ? その建物の中に無事でいるの?」
馬上からじっと香澄を見つめていたヴィネが、また戦闘員Aになにやら耳打ちする。
「閣下はこうおおせだ。いずこの国の妖怪か妖精か知らぬが、気丈なところが気に入った。わが花嫁になれば無礼はゆるす。ことわればこの場で握りつぶすと」
「次にそれよ、それ! シモジモの者とは直接口がきけませんっての? 大物ぶってんじゃないわよ、この毛だらけミートボール頭!」
手にした割りばしを棒手裏剣の要領でヴィネ目がけて投げつける。
もとより勝ち気でケンカっ早い性分の香澄だが、アルコールの力が後押しして、激しさもひとしおだ。
コツン。
香澄の投げた割りばしはきれいな弧を描いてヴィネの眉間
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