暁 〜小説投稿サイト〜
ソロモンの少女
よるの夢こそまこと
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、尻尾や羽のある者。赤や青など、普通ではありえない肌の色をした者を人といえばだが。

「ひょころでこれっれなんほお祭りぃ?」

 べつに酔っぱらって呂律がまわらなくなっているわけではない。口の中に物を入れてしゃべっているからだ。現実世界の香澄なら大人の前では絶対にしない不作法も、ここでは気がねなくしてしまう。

「おお、今までこのあたりで顔をきかせていた小うるさいやつがいなくなってのう。そのお祝いじゃよ。なんでも人間に退治されたそうじゃ。わしらバケモノを退治するのは、いつだって人間なんじゃよ……イツッ!」

 遠い目をして彼方を見つつ、香澄の太ももにのばされた手は触れる直前にはたかれてしまった。

「お嬢ちゃん、カスミと言ったね。なかなか酒が強いのう」
「楊のお爺さんはエロいわね。人間界でこんな真似したらワイセツ罪で捕まるわよ」
「やれやれ、手厳しいのう。わしは美しいものを愛でたいだけじゃよ」
「なら時と場合と場所と手段を選んで愛でてちょうだい。いまの日本じゃ想像上の女の子にエロいことしても捕まりかねないんだから」
「なんと! それはどういうことじゃ?」
「それはね、非実在青少年て言葉があって――」

 その時、祭りの喧騒とはあきらかにことなるざわめきが聞こえてきた。

「どけどけ! 一同、頭が高い。偉大なる伯爵ヴィネ様の御前である。ひかえおろう!」
「水戸黄門?」

 なにごとかと見ると、剣や棍棒で武装した一団が人々を押しのけ、次々と闖入してくる。
 ずいぶんと乱暴な連中のようで、強引に押しやられたせいで、いくつかの屋台が壊されてるではないか。

「あれは水戸黄門じゃなくて、悪い家老や代官の手先のヤクザ者ね〜」
「なにをのん気な! あの旗印はまたも外つ国のやからじゃ。せっかくウァサゴのやつがいなくなったというに、まためんどうそうなやからが来よってからに…」

 武装した一団はみんな青黒い肌に骨と皮だけのやせぎすの姿をしていて、顔はガイコツのよう。香澄はなんとなくスーパー戦隊シリーズに出てくるザコ戦闘員の姿を連想した。
 そんなモブキャラの中でひときわ異彩をはなつ者がいる。大きな黒い馬に乗った、装飾品だらけの、いかにも高そうな服を着ている。
 顔はいかにも獰猛そうなライオン。そう、獅子の頭をしているのだが、もうその程度ではおどろかない香澄だった。

「不運にも人の手によって害されたウァサゴ公に代わり、これよりこの地はヴィネ伯爵が治めることになった。この場で就任祝いをおこなうゆえ、ただちに祭りを中止し、解散せよ!」

 獅子頭の近くにいる戦闘員Aの言葉に、周りから不満の声があがる。
 とうぜんだろう。あとから来ておいて、それはない。
 石でも投げつけかねないブーイングの嵐の中、馬に乗った獅
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