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真田十勇士
巻ノ百三十一 国崩しの攻めその三
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「それが朝も昼も晩も続けばな」
「茶々様は参ってしまわれて」
「やがて講和と言い出す筈じゃ」
「大坂方が折れる形で」
「囲まれたうえにな」
「そのうえで講和とは」
「最悪の講和じゃ、大坂にとってな」
 まさにと言う幸村だった。
「どういった条件かわからぬわ」
「大坂を出ることになりますな」
「そう思ってよい、しかしそれを茶々様は聞かれるか」
「そうしたうえでの講和となっても」
「わかられる方ではない」
「どうもあの方は政は」
「我等より遥かに、いや全くわかっておられぬ」
 兄信之より政は劣っていると見ている幸村そしてまだ元服したばかりであり政に携わったことのない大助よりもというのだ。
「ご自身は気付いておられぬが」
「そうした方では」
「それでも出られぬわ」
「それでは」
「下手をすればまことにな」
「豊臣家はですな」
「滅ぶやも知れぬ」
 こう大助に言った。
「講和の後でまた騒がれてな」
「そしてまた戦となり」
「厄介なことになるやもな」
「そうなのですな」
「しかし我等はそれでもじゃ」
「はい、何としてもですな」
「関白様と約束したからな」
 秀次、彼にだ。
「右大臣様は必ずじゃ」
「お助けしますな」
「我等全員が生きたうえでな」
「それがしも十勇士も」
「そしてじゃ、何としてもお助けするぞ」
「戦がどうなろうとも」
「そうするぞ、無論大御所殿には負けぬしその御首もな」
 家康のそれもというのだ。
「手に入れるぞ」
「そうなれば勝ちですな」
「それもあるからな、何としてもじゃ」
「戦に勝ちますか」
「そうする、拙者は武士としてそうしたい」
「大御所殿に勝ちたいですか」
「そう思っておる、武士としてあの御仁に勝ちたい」
 天下人になった家康、彼にというのだ。
「あの方は間違いなく天下人」
「器を見ても」
「その方に同じ武士として勝ちたいのじゃ」
「だから御首をですな」
「取りたいのじゃ、だから右大臣様をお助けし」
「そして大御所殿の御首も」
「どちらも果たす、しかしそう考えると拙者はな」
 幸村はここで笑って我が子に話した。
「非常に欲が深いな」
「父上がですか」
「どちらも出来ぬと言われるものやも知れぬが」
「そのどちらもどうしてもというからですか」
「欲深いわ」
 笑ってこう言うのだった。
「そう思ったわ」
「左様ですか」
「ここまで欲深い者はおらんわ」
「父上は禄にも官位にも銭にも特に欲はないですが」
「だから無欲というか」
「今もそう思っていますが」
「それが違う」
 幸村自身の言うところだ。
「拙者はこれ以上はないまでに欲深いわ」
「右大臣様をお助けし」
「大御所殿の御首をというのだからな」
「その両方
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