一本目
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「エレン。いけるか?」
「お前こそ」
「問題ない。じゃ…行こうか」
俺とエレンは、森の中から飛び出した。
標的は、町を襲う黒ずくめ。
握った弓の弦を引き…
ピゥッ!と風を切った。
時は、八年程遡る。
目が覚めると、知らない家に居た。
ぼやける視界をクリアにして、前を見ると、一人の老人が見えた。
老人の後ろに灯りが見える…どうやら俺は仰向けになっているらしい。
「ティグルヴルムド君…」
ティグルヴルムド?誰だそれは?
その名前に聞き覚えが有ったが、誰の名かは思い出せない。
「君を、この町の皆で育てる」
何を言っている?
そう思って手を伸ばそうとしたが、体が動かない。
「おお、どうしたのかね?お腹がすいておるのか?」
空腹?違う。
この状況に対し説明を求める。
なんとか身を捩って、体動かそうとすると、ごろんと転がった。
次の瞬間、俺は絶句した。
寝返りを打ったあと、切り替わった視覚に映り込んだ自分に。
赤子となっていた自分に。
…!………!………………!
「てぃぐるさま!!」
「うゆ?」
目を開けると、エプロンを着て、獣の耳を持った幼児が俺に馬乗りになっていた。
「ティッタ…おもい」
「ティグル様が起きないからです!」
毛布をひっぺがされて、ティッタに叩き起こされた。
「ふぁぁ…おはよ…ティッタ」
「もうご飯出来てますよ」
それだけ言って部屋から出たティッタの腰には、茶色の尻尾がある。
「おー…行く…」
ベッドから出て、部屋から出ようと。
窓から射し込んだ光が、チカリと反射した。
目を向けると、そこには黒い弓が有った。
夜の闇よりも黒く、不気味な弓。
捨てられた俺と共に置いてあったらしい。
何か良くない物を感じる。
特段大切という訳ではないが、俺の出自に関わるかもしれないから、一応保管しているのだ。
部屋から出て、長い廊下を歩く。
この家は、かなり広い。
昔この町に住んでいた建築家が余生を過ごす為に建てたとか。
だが結局その建築家はこの町に戻ってくる事無く、都会の方で亡くなったとか。
残された屋敷は崩すのも面倒なので放置。
そこへ俺が捨てられ、この家に住む事となった。
階下に降りると、ティッタが待っていた。
彼女に連れられ、隣の家に行く。
家に入るとおばあさんが座っていた。
俺はこのおばあさんに頭が上がらない。
今年で五歳になるが、この五年間、ずっとティ
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