第二章
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「百歳を超えておってはな」
「何時死ぬかわからぬ」
「そうじゃ、柿は七年ぞ」
実が成る様になるまでにだ。
「僧正はそれまで生きられるのか」
「いえいえ、天下を治めるならば」
天海は自分に笑って話す家光に自身も笑って返した、幾ら何でもという笑みの家光とは違い彼の笑みは穏やかなものだ。
「七年位はですぞ」
「考えるべきか」
「それ位の長さで」
「政もか」
「そうでありまするぞ、むしろ七年はです」
この長いと思われる歳月はというのだ。
「短いものです」
「国家百年の計というしな」
「ですから」
「七年はか」
「そうしたものとお考え下さい」
「ほんの七年じゃな」
「左様であります、そしてこの柿の種も」
今収めたそれもというのだ。
「七年の間にです」
「実が成る木になるか」
「そうなりますぞ」
「そして僧正かは」
「生きておりますやもな」
このことは口を大きく笑って言う天海だった、だが家光は幾ら何でもそれはと思っていた。天海があまりにも高齢なので。
しかし七年後だ、天海が江戸城に参上した時に笑って言われたのだった。
「あの時の柿の種ですが」
「そういえばもうか」
「はい、七年経ちまして」
それでというのだ。
「見事な実が成りましたぞ、そして」
「まさかと思うが」
「こちらに」
見事な柿をうず高く積んだ箱を出してきたのだった。
「献上したく持ってきました」
「もう七年か、しかもな」
「拙僧もですな」
「生きておるか」
「ははは、このことは幸いに」
「そうか、しかしもう七年か」
家光はその時長いと思っていた歳月にも思うのだった。
「早いのう」
「これが政というものですぞ」
「百年を考えるものであるからだな」
「七年はです」
「ほんの一時じゃな」
「そういうものであります」
天海は家光に今も穏やかな笑顔で話した、そしてこの時から暫く経ってだ、家光は江戸の町で大食い大会がありある男の食いっぷりを聞いて思わず驚いて言った。
「何と、柿をか」
「はい、もう驚くまで食しておりまして」
「ふむ、そうなのか」
「次から次にという勢いで」
家光にこのことを話す幕臣も面白い感じで話す。
「食するとか」
「そうか、そこまで食するのならな」
家光は興味を持って幕臣に話した。
「余の前でじゃ」
「その者がどれだけ柿を食するか」
「見てみたくなったわ」
「それではですな」
「多くの柿を用意してな」
そうしてというのだった。
「その者を余の前に連れて来るのじゃ」
「それでは」
こうして家光はその者がどれだけ柿を食うのか見ることにした、そしてうず高く積んだ柿の山を用意してだった。
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