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塩賊
第一章
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                塩賊
 この時唐は深刻な悩みを抱えていた、朝廷においては常にこのことが論じられていた。
「江南の塩賊達を何とかしなければならない」
「だがどうしたものか」
「どれだけ軍を送っても逃げられる」
「民達が庇って奴等を匿ったりもする」
「だから縁賊達は蔓延る」
「そして勝手に塩を売る」
 塩は朝廷の専売であり唐はこの収入にかなり頼っているのだ、だがその塩を朝廷がかなり低い値で売る塩賊達がいてだ。
 彼等は大きな実入りを得ていた、朝廷が出す塩の値は国の財が危ういことや売る官吏の腐敗等でかなり高くなっているがそれより遥かに安い値で売る塩賊達は潮がなければ生きられない民達にとってはまさに救い主でだ。
 彼等を庇っていたのだ、それで賊達を何とかしたい朝廷も困っていたのだ。
「賊だというのに民達が庇う」
「朝廷よりずっと安い値で塩を売るからな」
「我等とて塩の値は何とかしたいが出来ぬ」
「今の朝廷の財政は悪い」
「税だけでは何とも出来ぬ」
「各地の節度使達が税を懐に入れている」
 それで朝廷に税の分が入らなくなっているのだ。
「それで塩の値に頼っているが」
「ある程度低くしても売る官吏が懐に入れる分値を上げている」
「それでどうしても高くなる」
「そこで塩賊が出て来る」
 その彼等がだ。
「塩賊共が我等の売り値よりずっと安く売るからな」
「だから塩賊達が儲けて力を得る」
「我等の売り値より遥かに安く売っても恐ろしい儲けになる」
「人は塩がなくては生きておけぬ」
 このことは絶対だ、だから唐も塩を国の専売としてそこから確かな財源を確保したのだ。このことは漢の武帝にはじまり鉄でもそうしている。これにより国家の中央集権も維持しているのだ。人に必要な二つのものを朝廷が握ってだ。
「しかしその塩を売ってな」
「我等は国を保っているが」
「塩賊達も儲けている」
「そうして力をつけている」
「それが厄介だ」
 塩賊、彼等がというのだ。
「このまま放っておけば賊が好き放題しかねない」
「しかも民が彼等を守る」
「何とかしたいがな」
「これをどうするか」
「軍を送っても民が彼等を守る」
「しかも奴等は塩を握っている」
 人が生きるに欠かせないものをだ。
「兵糧も銭も握っているのと同じだ」
「その両方をな」
「放ってはおけないが」
「手を打とうにも打てない」
「どうすべきなのだ」
「奴等をどうすべきか」
 彼等は幾ら話をしても答えを出せなかった、各地の節度使に塩賊の征伐を命じても同じだった。中には適当な理由をつけて動かない節度使さえいた。
 そうした状況は当の塩賊達にも伝わっていた、それでだ。 
 特に塩賊達が多かった江南等ででは朝廷も手出しがしにくかった、取り締ま
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