第一章
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煙草の味のキス
宮田彰はキスは煙草の味だと思っていた、それを会社の先輩である金本紹に話すと金本はすぐに宮田に言った。
「御前何でそう思うんだよ」
「いえ、実は俺が付き合ってきたっていいますか」
「店の娘か?」
「ホテトルとかソープの娘達は」
所謂風俗嬢はとだ、宮田はその細い目が印象的な顔で答えた。黒髪はショートにしていて唇は薄く細面だ。背は一七〇位で痩せた身体をしている。ネクタイとブラウスがよく似合っている。
「皆そうなんですよ」
「あっちの業界の娘で煙草は多いんだな」
「何ていうかキスしますよね」
「ああ、そうするとか」
「皆煙草の匂いがして」
そうしてというのだ。
「その味がするんですよ」
「御前煙草吸わないだろ」
「はい」
しっかりとした顔で自分より三センチは高い引き締まった身体つきの金本に答えた。彼もネクタイとブラウスが似合っている。
「そうです」
「俺もだ、しかしな」
「しかし?」116
「いえ、何ていうかな」
金本は自分の隣で焼酎を飲んでいる宮田に話した、二人共飲んでいる酒は焼酎で宮田は今は枝豆を金本はたこわさを肴にしている。
「俺は風俗には行かないからな」
「キスもですか」
「普通に彼女としてるからな」
そえでというのだ。
「そんな風に思ったことはないな、というかな」
「そんなキスはですね」
「知らないな」
そうだというのだ。
「煙草の味がするとかな」
「そうですか、けれど俺はなんです」
「風俗嬢とばかりキスをしてるからか」
「そうした時に」
つまり店に入った時にだ。
「勿論キスだけじゃないですが」
「それで済む筈ないな」
「ホテトルでもソープでも」
「御前風俗好きだからな」
「いや、彼女がいないと」
どうしてもというのだ、そうした相手がいないと。
「仕方ないですよ」
「相手がいないとか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「俺もそうした店に行くんですよ」
「それでキスをしたらか」
「はい、どの娘も煙草の味がするんですよ」
「俺はそうしたキスの味は知らないからな」
金本は宮田にどうもという顔で返した。
「風俗にも行ったことがあってもな」
「吸わない娘とだけですか」
「そうしたことをしてきたからな」
「だからですか」
「ああ、吸わない娘もいるさ」
そこは人それぞれだというのだ。
「御前はたまたまな」
「吸う娘とですね」
「やってるんだよ」
実にダイレクトな言葉で返した金本だった。
「やっぱりな」
「そうですか、じゃあ吸わない娘のキスの味は」
「それか」
「はい、一体どんな味ですか?」
実は宮田の知らないことの一つだ、キスはしたことがあっても相手がいつも喫煙
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