#0 プロローグ
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現代日本、都会から少し離れた場所。
木々が生い茂る森の中で彼は散歩をしていた。
「やっぱ休日は散歩に限るなー…っと」
何処にでもいるようなごくごく普通の高校生、荒木拓斗はいつも休日午前の習慣である散歩をしていた。歩きながら伸び、体をひねり、森林浴を思う存分楽しむ。
「んー…っ!気持ちいいなぁ」
いつもの休日と変わらないルート、見慣れた森林風景。
しかし、いつもと違う―異変、違い―それを彼は聞いた。
―ラー…ラー…ラララー…―
「…?歌…?何処から?」
それは彼の聞いたことのない歌だった。興味を持った拓斗は歌声の主を探して歌声の方へと進む。
歌が聞こえる森の奥へ…
どれほど歩いただろうか?いつの間にか足元に草が生い茂り木も鬱蒼としている所に拓斗は着いた。最初に聞こえた時よりも歌声は大きくなっている。
「すっごい歩いた気がする…というか何処だココ?」
周りを見渡す、心なしか生えてる木が見知らぬものになっているような…
と、木の上の方を見ると少女が枝に腰かけているのが視界に入る。どうやら歌声の主は彼女らしい。
「……」
白い服に大きな宝石のついたネックレス、美しい銀色の長い髪。
その少女の美貌に拓斗は見惚れていた。すると彼の視線を感じたのか少女は歌うのを止め、拓斗に視線を移した。
「…あなた、だぁれ?…帝国の人じゃ、ないよね?」
「あ、えっと…荒木拓斗…だよ」
「アラキ…タクト?…東洋島の人、かな?」
「とうよう…しま?」
「あれ?違うの…?」
(なんだそれ?何処のことだ?というか、俺は今何処にいる?)
そんな拓斗の考える姿を気にしてないのか、少女は呑気に自己紹介を始める。
「私はミスティア。ミストって呼んで?タクトさん」
「あ、うん、えと…ミストさん、聞きたいことがあるんだけど」
「さんはいらないよ?なぁに?」
「そ、そう?えっと…ここは何処なの?」
「ここ?ここはエントの森だよ?どうしてそんな事を聞くの?変な人」
クスクス、とかわいらしい声でミストは笑う。しかし拓斗はそのかわいらしさよりも地名に驚きを隠せなかった。
(エントの森?そんなの日本には無いぞ…!?というかエントってファンタジーの世界の生き物じゃないのか?)
「それよりも、あなた…素手で良くこんなところまで来れたね?強い人なの?」
「いや…えっと…君の歌声が聞こえて…気が付いたらここに」
「えっ…?じゃあもしかして『迷い人』?大変…レン達に言わないと…」
「…?え?」
ミストはふわり、と枝から地上に降り立ち、拓斗の手を取って引く。
「さ、こっちこっち!」
「こっちって…どこに!?」
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