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真田十勇士
巻ノ百三十 三日その十一

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「どうされますか」
「それは」
 そう言われると大野も返答に窮した、総大将は確かに秀頼だがそれは名目上のことで誰がどう見ても大坂の総大将は茶々だからだ。
 だからこの度も茶々に再び申し出ようとしたのだ、だがその茶々が大酒を飲んで寝てしまってはだった。
 大野も諸将もだ、これではだった。
「修理殿、これではです」
「残念ですが」
「どうしようもありませぬ」
「飲まれてお休みになられては」
「そうなってしまっては」
「また後日ということで」
 有楽はその諸将に涼しい顔で言う飲みだった。
「また明日」
「明日ですな」
 木村は有楽に鋭い顔で問うた。
「明日茶々様にですな」
「はい、お会い下され」
「わかり申した、ただです」
 木村は顔だけでなく声も鋭くさせそのうえで有楽にさらに言った。
「今は戦をしております」
「だからですか」
「酒は禁物です」
 飲めば乱れる、乱れれはそこから敗れる。木村はそう考えてそのうえで有楽を咎めているのだ。
「ですから今後茶々様にも」
「酒はですな」
「有楽殿は茶人ですから」
 その数寄者ぶりは天下に広く知られている、利休の弟子でもありその名声は天下に轟いているのだ。
 そのことからもだ、木村は有楽に言うのだった。
「茶をです」
「勧めてですか」
「茶々様のお心を安らかにして頂きたい」
「左様ですな」
 今気付いた様な顔を作っての返事だった。
「茶もお心が安らかになりますし」
「そうです、ですから」
「次からはそうします」
「お願いしますぞ」
「わかり申した、ではこの度は」
「これで、ですな」
「拙者も各々方もです」 
 諸将に説いて聞かせる、そのうえで茶々のところには一切行かせまいとする言葉だった。
「下がりましょう」
「さすれば」
 大野が応えた、こうして諸将は不本意ながらも茶々に言うことなく本丸から退いた。そのお後でだった。
 後藤は諸将にだ、憤懣やるかたないといった顔でこう言ったのだった。
「何故あそこで酒を勧められたか」
「わからぬのう」
 毛利は腕を組んで首を傾げさせていた。
「これはな」
「全くじゃ、有楽殿はどういうおつもりか」
「まさか」
 木村はここではっとした、そのうえで後藤に言った。
「有楽殿は噂通りに」
「幕府とか」
 治胤もその話を聞いていて知っていたので応えた。
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