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豆狸
第六章
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「少しずつ慣れてな」
「そうしてですか」
「飲んでいけばいいの」
「ああ、酒はそれぞれのペースで飲めばいいんだよ」
 それでというのだ。
「だからな」
「今からですね」
「少しずつ飲めばいいのね」
「そうだよ、俺は俺のペースで飲んでるしな」
 言いつつコップに入れた酒を一気に飲んでしまう。
「二人も飲め飲め」
「わかりました」
「それじゃあ」
 二人は義兄の言葉に頷いてビールを飲みはじめた、そうしてみると美味くそれでどんどん飲んでいった。二人のその飲みっぷりを見てだった。三樹夫は笑って言った。
「いや、普通は」
「普通は?」
「普通はっていうと」
「最初はそんなに飲まないな」
 ごくごくと飲まないというのだ、二人の様に。
「ひょっとして義母さんの血か」
「あら、そうかも」
 あやめは三樹夫の今の言葉にくすりと笑って応えた。
「私結構強い方みたいだから」
「その飲みっぷり見ればわかります」
 あやめがウイスキーを飲む様子を見ての言葉だ。
「それは」
「あら、そうなの」
「はい、これはですね」
「これは?」
「面白い飲み方出来ますね」 
 明るく笑って言う三樹夫だった、そして。
 彼は三人に明るく笑って話していった、そのうえで。 
 四人で飲みながら心ゆくまで話した、これはこの時だけでなく機会があればでその都度親睦を深めていって。
 三樹夫は一年もすれば三人と完全に打ち解けていた、それであやめは蒔絵とちるに対して笑顔で話した。
「お酒のお陰でね」
「ええ、義兄さんとね」
「仲良くなれたわね」
「本当によかったわ、というかね」
 あやめは三樹夫のことも話した。
「三樹夫さんってお酒入るとね」
「人が変わるわね」
「普段は無口なのに」
「それがね」
「急に陽気になるのよね」
 そして饒舌になるのだ。
「笑い上戸だし」
「世話焼きになってね」
「ええ、あれが地なのかしらね」
 こう娘達に言うのだった。
「ひょっとして」
「そうかも知れないわね」
「お小遣い多いしね」
「さりげなく気遣いしてくれて」
「勉強も教えてくれるし」
「そうよね、お酒は悪酔いしたり飲み過ぎたら身体によくないけれど」
 それでもと言うあやめだった。
「私達が仲良くなれたからね」
「よかったわね」
「そのことについては」
「お陰で本当に家族になれたわ」
 飲みながら会話をしていき親睦を深めていってだ、何時しか二人と三人若しくは四人と一人だった家族は五人になったのだ。
「お酒に、そして何よりもね」
「あの店長さんに感謝ね」
「正体は狸のね」
「ええ、お酒好きな妖怪豆狸のね」
 この妖怪が店長の正体なのだ。
「お陰よ、だから今日もね」
「ええ、あそこでお酒買うのね」

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