第1部
アリアハン〜誘いの洞窟
勇者との出会い
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う英雄なんだぜ!!」
酒場の外から、次々と歓声が聞こえてくる。
町の人々も、勇者の旅立ちを今か今かと待ち望んでいたらしく、次々と声援を送っている。
私は我に返り、その反動で持っていたコップをひっくり返してしまった。それでも心臓の鼓動は早くなるばかりだ。
そして酒場にいた冒険者たちも、一気に色めき立つ。
「いよいよ、勇者とともに旅立つときが来たようだな!!」
「へっ、なに図々しいことぬかしてんだよ。レベル8のくせに生意気なんじゃねーの? 入るのはレベル12であるこの俺が……」
「そりゃこっちのセリフだ!! 俺なんかザオラル覚えてるんだぜ」
「なんだとっ!!?? オレなんか会心の一撃が……」
と皆がざわめく中、ふいに、扉を開ける音が聞こえた。
音のした方へ振り向くと、そこには扉の前で悠然と立っている、一人の少年の姿。
黒い髪に鳶色の瞳。細身だが体つきはしっかりしているように思える。16歳の誕生日に旅立つと噂で聞いていたけれど、精悍な表情からは、どこか大人びた印象をも与える。
額には、蒼く輝くブルーサファイアを埋め込んだ、サークレットが飾られていた。
まちがいない、彼こそが勇者だ、と誰もが思った。
私の心臓もまた、限界に達していた。
彼は、一通り辺りを見回したあと、正面を向いて言った。
「これから旅に出るんだが、誰か仲間になってくれないか?」
あっさりと、だがきっぱりとした言い方だった。表情はまったく動いていない。
しかしその言葉を聞いた途端、酒場にいた冒険者たちが、まるで海岸に寄せる波のように、一斉に勇者に詰め寄ってきた。
「君があの有名なオルテガの息子さんか〜。いやあ噂には聞いているよ。この年でレベル30なんだって?」
「勇者様には及ばないが、実はオレも武闘家の道を極めててさ、グリズリーなんか一発で気絶させるぐらいのことは出来るぜ」
「私これでも炎の上級魔法とか覚えてるから、仲間にするにはうってつけよ!」
「何言ってるんだ。旅に必要なのは特殊技能を持つ盗賊だ。怪しい所は必ずチェックして見せるぜ」
などと、口々に自分をアピールしながら詰め寄る冒険者達。その迫力に圧倒された私は、いまだにこぼれたミルクのそばでぼーっと突っ立っていた。一方勇者の方はというと、これだけの人々にもみくちゃにされながらも、顔色一つ変えず平然と構えている。
無表情でいることしばし。そしてついに、初めて勇者の口が開いた。
「とりあえず、俺よりレベルの低いやつは今すぐ消えろ。あと金のないやつも消えろ。見た目が暑苦しいやつは問題外だ。それでも自分に自信があるやつだけ残れ」
…………………………。
一瞬にして沈黙。そしてとどめの一言がさらに場を凍りつかせた。
「聞こえなかったのか? どいつもこいつも頭の悪いバカ
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