第四章
[8]前話
「どうもね」
「あれっ、そういえば」
「見ないわねあの人」
「お茶出してくれてすうって消えたわね」
「そうなったわね」
二人もこう言った。
「まさに妖怪ね」
「忙しい時に誰も気付かないうちに入ってくつろいで」
「それで帰っていくなんて」
「お話通りね」
「そうした妖怪ね」
「本当に」
「いや、実在したのね」
また言う穂乃香だった。
「ぬらりひょんって」
「そうみたいね」
「本当にいたのね」
「お茶出してくれたけれど」
「やることはやったわね」
「お茶飲んでお菓子食べてね」
「煙草まで吸って」
二人で言う、そして穂乃香も言った。
「うちで煙草吸うのってお祖父ちゃんだけだし」
「その今は京都に行ってる」
「その人だけなの」
「お父さんもお兄ちゃんも吸わないの」
そうだというのだ。
「だからすぐにわかったわ、勿論お母さんも妹も吸わないしね」
「妹さん吸ったら駄目でしょ」
「未成年なのに」
高校生の穂乃香の妹なら未成年であることは絶対である。
「それで吸ったらね」
「駄目でしょ」
「お店の人でここに来る人もいないし」
穂乃香達の生活の場にはというのだ。
「だったらね」
「間違いなくなのね」
「ぬらりひょんが吸ったのね、煙草は」
「ええ、けれど飲んで食べて吸ってそのままにしてるから」
穂乃香はこのことも話した。
「後片付けはしないとね」
「それはやれやれね」
「本当にね」
「ええ、ただ本当にいたことは」
そのことはと言う穂乃香だった。
「わかったわ、そのことは何よりね」
「そうね、じゃあね」
「私達が後片付けして」
「それでアルバイト料貰うわね」
「そうさせてもらうわね」
るかと恭子も応えてだ、そうしてだった。
三人でぬらりひょんがくつろいだ跡の片付けをした、妖怪の置き土産を。
ぬらりひょん 完
2018・3・27
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