第三部 古都にけぶる月の姫
また二人で
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
―――目が覚めると、京都の拠点にしていた建物の天井が視界に映った。
窓の外が少し明るくなっているので、おそらくは夜明けごろだろうか?
私はあわてて起き上がろうとして…全身を苛む激痛に思わず呻いた。
だが不思議と、目に見えるほどの傷はそう多く残ってはいない。誰かが治療してくれたのだろうか…?
「―――あ、文姫様!目を覚ましたんですね!」
起き上がって傷の状態を見ていると、ドアの開く音がして明るい女性の声が響く。
小柄な体、雪の様な銀色の髪、そして草原の色をした瞳。
「……ブリギッド?」
「あ、はい!」
以前、私が曹操に頼まれて戦闘技術諸々を教えていたうちの一人、ブリギッドがそこにいた。曹操によると、アイルランドの守護聖人・キルデアのブリギッドの子孫だとか。本当かどうかはわからないが、神器を持っているため曹操が連れてきた一人ではある。
「…曹操は?というか、なんで本部待機だったブリギッドが此処に…?」
「リーダーに呼ばれたんです。リーダーは今、ちょっと外してますけど…」
「そっか……ゲオルク達は?」
「―――それについては、俺から説明しよう」
上半身を起こしたところで、いつもの声が聞こえてきた。少し不機嫌に聞こえるのは、気のせいかな?
姿を見せた曹操に恐縮して一礼するブリギッドを見ながら、曹操に視線を向ける。
……片目に、眼帯が付いている。戦闘で失ったのだろうか。
そっと手を伸ばすと、ぎょっとしたように身を引く曹操。
「……眼、どうしたの?」
「あ、ああ、赤龍帝にやられてね。だが大丈夫だ、代わりの眼は移植した」
「…まともな眼じゃないよね?」
ちりちりとした感覚を感じて質問してみれば、曹操がため息をついた。
やっぱり、まともなものじゃなかったようだ。というか…
「それに、怪我してるよね?―――足と、背中」
「……全く、感覚が良すぎるというのも考え物だな」
大きく嘆息した曹操が、私の傍に座る。
伸びてきた手が、いつものように私の髪を挟んで梳いている。そこだけはいつものままだ。
だけど。これくらいで誤魔化される気はない。
じっと見つめていると、観念したように渋々と口を開いた。
「…移植したのはメデューサの眼だ。ペルセウス経由で手に入れてな」
「………ペルセウスが?」
曹操の口から出てきたのは、この作戦が始まる前に袂を分かち脱退した元メンバーの名前。
どうやら、その彼が最後の土産として曹操に代わりの眼を用意したというのが真相らしい。
「…それで、その怪我は?」
「君を庇った際に負傷した。心配するな、そこまで深刻な怪我じゃない」
「……ごめん」
「気にするな。輝夜姫に君を渡すわけにはいかなかったからな
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ