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真田十勇士
巻ノ百二十九 木村初陣その十一

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「茶々殿のな」
「これまでお話した通りに」
「そうするのじゃ、大砲が来たらな」
「では」
「その時に決まる」
「しかしです」
 ここで柳生が剣呑な顔で言ってきた。
「危ういことは」
「大砲が来る前にじゃな」
「大坂方がうって出ることですが」
「それじゃな」
「そうなれば大砲を撃つどころではなくなりますが」
「そうなれば大砲では攻められぬ」
 家康もその通りだとだ、柳生に答えた。
「確かにな」
「左様ですな」
「しかしじゃ」
「そうなることはないですか」
「茶々殿がそれを認めるまでにな」
 認めればすぐに城の中の兵達はうって出て来る、このことは家康にもわかっていた。実際に後藤や木村がうって出て来ている。
「精々それぞれの将の兵達が出るだけじゃ」
「それだけですか」
「全軍ではない」
 城の中の十万の兵達のというのだ。
「そこまでになるには時がかかる」
「城内の諸将が必死に説得しますが」
「その説得にも時がかかろう」
 家康は笑って柳生に答えた、無論柳生もそうしたことがわかっていると彼自身わかっていての答えである。
「そうじゃな」
「茶々殿は強情な方故に」
「そうじゃな、そして説得する間にじゃ」
 幸村達大坂の諸将がというのだ。
「大砲が届く、そしてな」
「その大砲で、ですな」
「茶々殿の心を攻める」
「では大砲の護りは」
「そこは充分以上に固める」
 家康はこのことも怠ってはいなかった。
「何としてもじゃ」
「だからですな」
「そしてじゃ」
「敵の軍勢は近寄せぬ」
 その大砲にというのだ。
「真田の忍達が来ようともな」
「あの者達が来てもですな」
「退けられる様にする」
「ではあちらに伊賀の十二神将を」
 今は十勇士達を見張っている彼等をとだ、柳生は家康に問うた。
「向かわせますか」
「そうも考えておる」
「十二神将達は十勇士達が行く場所にですな」
「向かわせるつもりじゃ」
 そう考えているというのだ。
「わしはな」
「左様ですか、では」
「うむ、それではな」
「大砲が来れば」
「そこで戦を決める」 
 確かにとだ、家康は柳生に答えた。緒戦では敗れ続けているが家康はそのことを意に介してはいなかった、戦全体を見て大砲が届くのを待っていた。


巻ノ百二十九   完


                   2017・11・1
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