第三章
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「甲子園では別よ」
「そうなのね」
「甲子園でだけはそうなのね」
「藤村さんの背番号だから」
「永久欠番だから」
「この時だけは別よ」
こう言ってだ、奈央は甲子園でだけは十番を着けなかった。しかしその他の時は違っていてだった。
いつも十番を着けているか自分のラッキーナンバーにしていた、それで試合に出る時もそうだった。
自分の背番号を着けてだ、背中を鏡で見て言った。
「やっぱりいいわね」
「十番はっていうのね」
「奈央にとって」
「そうだっていうのね」
「そう、この十番を着けてると」
まさにというのだ。
「もう気が引き締まってビシッとなるのよ」
「他の背番号よりもなのね」
「十番がいい」
「そうなのね」
「もうそれが一番いいっていうのね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「これからも着けていきたいわね、サッカー以外でも」
「甲子園では別だけれど」
「十番がいいの」
「何でも」
「そう、十番でいきたいわ」
こう言ってだ、試合にも出るのだった。背番号十はこの時も活躍出来た。そうして笑顔で試合から戻ることが出来た。
そして家に帰るとまた母と姉に言われた。
「試合活躍したみたいね」
「十番の背番号着けて」
「そうよ、それで今日の晩御飯何なの?」
奈央は母と姉に試合に勝った笑顔のまま尋ねた。
「一体」
「唐揚げよ」
母が笑顔で答えた。
「奈央の好きなね」
「あっ、唐揚げなの」
「そうよ、鶏のね」
「いいわね、じゃあ今日は唐揚げで乾杯ね」
「十個食べるの?」
唐揚げをとだ、姉は妹に冗談を交えて尋ねた。
「そうするの?」
「十個?もっと食べたいわね」
「あれっ、この時は違うの」
「お腹一杯食べたいから」
だからだというのだ。
「十個どころかね」
「食べられたらなの」
「十個以上食べたいわ」
「それは別なのね」
「ええ、じゃあ晩御飯の時は」
「唐揚げをなの」
「お腹一杯食べるわ」
十個どころでなくというのだ、こう言って奈央は晩御飯の唐揚げを食べた。この時食べた唐揚げの数は十個ではなく十一個だった。藤村ではなく村山になったがそれでもこの時は奈央は満足していた。
背番号十 完
2018・3・21
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