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打って切って茹でて
第一章

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               打って切って茹でて
 天王寺のりの特技は麺打ちだ、とかくうどんも蕎麦も何でもござれだ。
 それで家でもこうしたものを食べる時はのりが綿を打ってからはじめる、だが。
 その彼女にだ、兄弟達はある日兄弟全員でテレビを観ている時に尋ねた。
「のりって麺打つの上手だけれど」
「それどうしてなの?」
「いつもいい麺打つけれど」
 兄も弟達ものりに聞いてきた。
「コシがあるね」
「味も太さも丁度いいけれど」
「切り方だってな」
「特にコシだよね」
「うん、姉ちゃんの打つ麺凄いコシあるよね」
「どんな麺だってな」
「コシのこと?それはね」
 のりは兄弟達に何でもないといった顔で答えた。
「やっぱり茹で加減よ」
「麺のか」
「それでなんだ」
「あのコシなんだ」
「そう、スパゲティだったら」
 こちらの話もするのりだった。
「アルデンテね、そうした感じに茹でたらね」
「コシがあるのか」
「いつものコシになるんだ」
「おうどんやお蕎麦の」
「それぞれの麺で茹で具合があるから」
 のりは兄弟達にこのことも話した。
「注意しないとね」
「成程な、いや」
 兄は妹の言葉に一旦納得しかけた、だが。
 ここでだ、妹にその納得しかけたものを引っ込めたうえでさらに言った。
「それだけじゃないだろ」
「?どういうこと?」
「だからな、茹で加減だけてな」
 これだけでというのだ。
「あのコシはないだろ」
「あっ、そういえばそうだね」
「そうだよね」
 今度は弟達が言った。
「姉ちゃんが打ったおうどんと他のおうどん違うよ」
「スーパーで買ったのを茹でても」
「お蕎麦でもラーメンでも」
「全然違うよ」
「姉ちゃんが茹でても」
「そうしてもね」
「それでだよ」
 兄はまたのりに言った。
「それは違うって思ったんだよ」
「それで言うの」
「ああ、それだけじゃないだろ」
「茹で加減だけじゃ」
「違うだろ」
「そう言われたら」
 どうかとだ、のりも否定せずに答えた。
「まあそうかもね」
「御前が打つ麺自体に何かあるよな」
「ええ、実は打つ時にね」
「その時にか」
「コツがあるのよ」
「そのコツでだよな」
 兄は妹に身を乗り出す様にして問うた。
「あのコシになるんだな」
「茹で加減だけじゃなくてね」
「そうだよな、そもそも味だって違うしな」
「味は私の作り方だけれど」
 それぞれの麺のだ。
「おうどんもお蕎麦も」
「ラーメンもだな」
「ええ、けれど打つ時にね」
「そのコツがあるんだな」
「ええ、それでね」
 あのコシになるとだ、のり自身も答えた。
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